盛美園

盛美園：武学流庭園の粋と和洋折衷の美

青森県平川市猿賀石林に位置する盛美園は、津軽地方で隆盛を極めた大石武学流の粋を集めた日本庭園であり、国の名勝に指定されています。郷土の士族であり資産家でもあった清藤盛美が、明治35年（1902年）に庭師の小幡亭樹を招き、9年の歳月をかけて完成させたこの庭園は、武学流庭園の最高峰とも称されています。

武学流庭園とは

武学流は、江戸時代初期に都落ちしてきた公卿らが、仏教文化と地元に根付いた古神道文化の思想を習合させて、京風の庭を造った流派です。津軽地方では特に人気を博し、盛美園はその代表例として知られています。明治時代の作庭としては、京都の無鄰庵や清風荘に匹敵する傑作とされています。

和洋折衷の盛美館

庭園の南西に佇む盛美館は、和洋折衷の建築様式が特徴的な洋館です。1階は庭園を見渡せるように縁側を設けた純和風の意匠である一方、2階は東北角に八角形のドーム屋根の塔屋を配置し、屋根には尖塔を設けた洋風のデザインとなっています。この独特な景観は、庭園の添景として一層の魅力を添えています。

盛美館は、地元の宮大工であり、堀江佐吉の下で洋風建築の腕も磨いたとされる西谷市助が設計・施工を手がけました。西谷は、東京方面への視察を経て、4年の歳月をかけてこの建物を完成させました。

ジブリ作品との関わり

盛美園は、2010年公開のスタジオジブリ作品『借りぐらしのアリエッティ』に登場する屋敷や世界観のイメージの参考になったとされています。ただし、作中の屋敷は実際の盛美園とは内部の構造や意匠が大きく異なっています。

清藤一族

盛美園を築いた清藤家は、地域に根差した名家です。

初代盛秀は、鎌倉幕府5代執権北条時頼の家臣でした。
清藤盛美は、清藤家24代当主であり、尾上銀行専務取締役を務めました。
清藤三津郎は、日本歯科医師会常務理事や黒石市長を歴任しました。
清藤唯七は、衆議院議員や弘前市商工会議所会頭を務めました。
清藤六郎は、歯科医であり、青森県議会議員を務めました。

盛美園の概要

総面積：12,000平方メートル（1.2ヘクタール）
形式：築山式枯山水・池泉回遊式の融合
竣工：庭園は1910年（明治43年）、盛美館は1909年（明治42年）
所在地：〒036-0242 青森県平川市猿賀石林1
指定：国の名勝（1953年（昭和28年）3月31日）
交通アクセス：弘南鉄道弘南線 津軽尾上駅から徒歩10分
周辺施設：清藤氏書院庭園（隣接）

盛美園は、その美しい庭園と独特な建築様式で、訪れる人々を魅了し続けています。津軽地方の歴史と文化に触れることができる貴重な場所として、多くの人々に愛されています。

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