目羅博士

目羅博士について

江戸川乱歩の短編小説『目羅博士』（めらはかせ）は、1931年に『文芸倶楽部』の増刊号に掲載された作品です。この作品は、作者の多様な改題を経て現在広く知られています。初めての題名は『目羅博士の不思議な犯罪』で、1946年に発行された緑十字出版の『目羅博士』として収録され、その後、1947年には『目羅博士の不思議な殺人』とも改題されました。1951年には春陽文庫版で初出名に戻り、1962年の『江戸川乱歩全集』以来、主に『目羅博士』として知られています。

あらすじ

物語は探偵小説家の江戸川が上野動物園で「男」と出会うところから始まります。この男は、巧妙に猿をからかう技術を持ち、江戸川に対し模倣の本能やそれに関連した恐怖について語ります。江戸川は動物園を去り、上野の森で「男」の体験談をじっくりと聞くことにします。この男の話の中には、目羅博士と呼ばれる眼科医や、自殺した香料ブローカーの悲劇的な物語があります。

登場人物

• - 江戸川：探偵小説家であり、物語の語り手です。上野動物園で「男」との出会いをきっかけに、彼の語る不思議な話に引き込まれていきます。
• - 男：ルンペン風の男で、江戸川に自身の経験を語ります。彼の話が物語の核となります。
• - 目羅博士：物語に登場する医学博士で、眼科を開業しています。この博士が物語の中心人物として、他のキャラクターとの関連を持ちます。
• - 香料ブローカー：目羅博士が住むビルの住人で、自らの命を絶ちます。この事件が他の登場人物にも影響を及ぼします。
• - 事務員：ビルに勤務しており、同じ部屋に住む香料ブローカーや他の人々と同じ運命をたどることになります。

先行作品との関連

『目羅博士』は、形態として先行作品といくつかの類似点を持っています。特に、エーヴェルスの短編『蜘蛛』の影響を受けたと乱歩自身が述べています。この作品では、同じ部屋に泊まった人々が次々と不運な運命に見舞われる展開が描かれており、模倣というテーマが重要な要素となっています。しかし、乱歩はあくまで独自の解釈と展開を持たせています。

また、『目羅博士』はエルクマン＝シャトリアンの短編『見えない眼』との類似が指摘されています。この短編もまた、人が泊まった部屋で次々と事件が起こる設定であり、乱歩にとってのインスピレーション源となったかもしれません。

収録された版

この小説は様々な版に収録されています。例えば、2004年に出版された光文社の『江戸川乱歩全集 第8巻』や、『人間椅子 江戸川乱歩ベストセレクション1』、さらには他の文学全集にも含まれています。

影響と派生作品

『目羅博士』は多くの作家に影響を与え、一部の作家はオマージュや続編として作品を執筆しています。島田荘司による短編『死聴率』や竹本健治の『月の下の鏡のような犯罪』はこの作品にインスパイアされたものとされています。乱歩の作品が持つ独特の緊張感と謎は、後世の作家たちに深い印象を与え続けています。

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