直轄事業

直轄事業と地方負担の仕組み

直轄事業とは、国がその計画と実施を担当する公共事業のことであり、具体的には道路や河川、ダム、港湾などのインフラ整備が含まれます。このような事業では、地方自治体もその一部の費用を負担する仕組みが設けられており、全ての負担が国側にあるわけではありません。特に、地元自治体は総事業費の1/2から1/3程度の負担を求められることが一般的です。

地元負担の法的根拠

この地元負担は、道路法第50条、河川法第63条、港湾法第52条、空港法第6条等に基づいており、都道府県と国が事業費について協議し、合意を形成するというプロセスが必要です。この制度は、1873年6月に制定された「河港道路修築規則」が始まりとされ、以降、公共事業における地方負担のあり方については長い歴史を持っています。

港湾事業の場合、地方公共団体が計画を立案し、その計画に基づいて国と協議を行い、条件を満たす場合に限り直轄事業として進められます。このため、港湾の直轄事業は他の公共事業とは異なる性格を持ち、事前に地元自治体と話し合う制度が存在します。

直轄事業負担金の現状

直轄事業による地元負担は「直轄事業負担金」と呼ばれ、全国の自治体における普通会計ベースでの合計額は平成20年度ではおよそ1兆920億円、平成21年度は1兆260億円となっています。これには、工事費用だけでなく、国道事務所などの建物の建て替えコストや国土交通省職員の人件費も含まれています。

自治体の態度と改善の動き

地方自治体の財政担当者にとって、直轄負担金は厄介な問題です。負担金は事業の内訳が示されないため、年度途中に国から「この額を請求する」という形で突然要求されることもあります。これは多くの自治体にとって大きな負担となり、財政計画に影響を与えています。

都道府県や政令指定都市は毎年、国に対して直轄負担金の改善を求める要望書を提出していますが、国は法律に則って進めていることを理由に改善提案を拒否してきました。しかし、地方自治体も国庫補助事業を維持する必要があるため、積極的な解決を求める動きは限定的な状況が続いています。

また、全国知事会では長年にわたり直轄事業制度や地方負担の軽減について議論されており、1959年には制度の廃止を提案した事例もあります。最近では、大阪府の橋下徹知事が直轄負担金制度を批判し、平成21年度予算において負担金を大幅に削減する方針を示しました。

終わりに

直轄事業における地元負担の制度は、地方自治体にとって多くの課題を抱えるものです。国と地方の負担の割合や制度の透明性をどう高めていくかが、今後の地方自治のあり方においても思考を要する重要なテーマとなるでしょう。

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