相互確証破壊

相互確証破壊（MAD）

相互確証破壊とは、英語の「Mutually Assured Destruction」（MAD）の略で、核戦略の一環としてお互いの核攻撃能力によって相手を抑止する概念です。この理論は、1965年にアメリカのジョンソン政権でマクナマラ国防長官が提唱しました。相互確証破壊の基本的な考え方は、もし一方の国が先制攻撃を行った場合、その攻撃を受けた国が持つ残存核兵器によって確実に報復されるというものです。このため、先制攻撃を行った国も大きな損害を被ることとなり、結果として核戦争の回避が期待されます。

相互確証破壊成立の要件

相互確証破壊が成立するためには、いくつかの条件があります。まず第一に、相手国を効果的に破壊できるだけの充分な核戦力を持つ必要があります。雪玉のように集少な数の核兵器だけでは、報復能力が保障されず、相互抑止は成立しません。

さらに、報復核戦力は「非脆弱性」と「残存性」を持つ必要があります。もし第一攻撃によってその能力が壊滅すれば、相互確証破壊は成り立たないのです。したがって、航空機を用いた常時上空待機、艦船やトレーラーから発射可能な潛水艦発射弾道ミサイル（SLBM）、知覚しづらい極超音速滑空体などの形態が考慮されます。加えて、核ミサイルサイロの堅牢性や分散配置、弾道ミサイルの固体燃料化も重要な要素です。

拡大核抑止の動向

MADが成立している国々では、拡大核抑止と呼ばれる戦略的コミュニケーションが作用しにくい状況も見受けられます。冷戦後期、アメリカとソ連（ロシア）間での相互確証破壊状況があったにもかかわらず、日本とソ連、NATOとソ連間ではその信頼性が問われました。

相互確証破壊の歴史

歴史的に見ると、相互確証破壊は数回の時代を経て発展してきました。初期の冷戦期は、核兵器の数が少なく、ミサイル技術も未発展でありました。このため、相手の固定型ICBM基地に核を打ち込むことで、数量的優位を生かして攻撃を行う状況がありました。

その後、冷戦が進むにつれ、核兵器の即応性を上げるため、各国は核ミサイルの弾頭を小型化したり、自動発射システムの整備を進めたりしました。これらの試みは、少数の核兵器であっても事前に発射することで、残存能力を確保する狙いがありました。

中国の相互確証破壊戦略

一方、中国は近年、核戦力の現代化によって相互確証破壊の達成を目指しています。最新の固体燃料移動式大陸間弾道ミサイル（ICBM）を配備し、先制攻撃の脅威から逃れる戦略を採用しています。これにより、中国の核戦力は従来の固定型から流動型へと進化しています。

課題と展望

ただし、相互確証破壊は完璧ではありません。新たに核武装を進める国々では、早期警戒網が十分に整備されていないケースも少なくありません。このような状況では、誤認や誤探知の可能性が高く、偶発的な核戦争へと発展する危険性もあります。相互確証破壊を成立させるためには、迅速な意思決定と精密な情報把握が不可欠です。

結論

結局、相互確証破壊は、冷戦後の核戦争抑止策のひとつとして重要な位置を占めています。しかし、その成立のためには、核兵器の数量や威力、即応性を充実させると同時に、各国間での信頼や情報共有も不可欠です。これを成功させるためには、多国間での戦略的コミュニケーションを化学し、核の傘の信頼を固める努力が求められます。

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