相談援助実習指導者

相談援助実習指導者は、社会福祉士の資格を有する者が、社会福祉士養成課程における「相談援助実習」を指導する役割を担う専門職です。この実習指導者は、単に知識を伝えるだけでなく、実習生が実際に相談援助の現場で必要となる実践的なスキルを習得し、社会福祉士としての専門性を高めることを目指します。

具体的には、以下の3つの主要な目的を達成するために、実習指導者はその専門性を活かします。

相談援助に関する知識と技術の習得: 実習生は、相談援助の理論や技法を具体的に学び、実践を通じて体得します。これにより、机上の知識だけでなく、実際の現場で活用できるスキルを身につけることができます。
社会福祉士としての資質、技能、倫理観の育成: 実習を通して、社会福祉士として求められる資質、技能、倫理観を総合的に習得します。また、自己の課題を把握し、専門家として成長するための能力を養います。
多職種連携の理解: 実習を通じて、関連分野の専門職との連携の重要性や具体的な内容を実践的に学びます。これにより、チームでクライアントを支援する力を養います。


実習指導者になるためには、一定の要件を満たす必要があります。まず、社会福祉士の資格を取得していることが前提です。その上で、3年以上の相談援助業務経験を積む必要があります。さらに、「社会福祉士実習指導者講習会」を受講し、研修を修了することで、正式に実習指導者として認定されます。

この実習指導者の要件は、社会福祉士及び介護福祉士法の改正に伴い、2007年に定められました。それ以前は、実習指導に関する明確な基準がありませんでしたが、改正により、実習の質の向上が図られることになりました。2012年4月からは、実習指導者の要件として講習会の受講が義務化され、制度が完全施行されました。

実習指導者の要件は、社会福祉士に関する科目を定める省令にも規定されています。

社会福祉に関する科目を定める省令 （平成二十年三月二十四日文部科学省・厚生労働省令第三号）

第四条七 実習施設等における相談援助実習（市町村において相談援助実習を行う場合を含む。次号において同じ。）を指導する実習指導者は、社会福祉士の資格を取得した後、相談援助の業務に三年以上従事した経験を有する者であって、かつ、実習指導者を養成するために行う講習会であって厚生労働大臣が別に定める基準を満たすものとしてあらかじめ厚生労働大臣に届け出られたものを修了した者であること。

この省令からもわかるように、実習指導者は、実務経験と講習会修了の両方を満たす必要があり、これにより、実習指導の質の確保と向上を目指しています。

社会福祉士養成における実習は、単なる体験ではなく、社会福祉士として現場で活躍するための実践的な訓練の場です。実習指導者は、実習生が安心して学び、成長できる環境を提供する重要な役割を担っています。実習指導者の存在は、社会福祉士養成の質を担保し、より質の高い社会福祉士を社会に送り出す上で不可欠な存在と言えるでしょう。

実習は、厚生労働省が定める実習指定施設で180時間以上行うことが定められています。この時間を通して、実習生は、現場で直面するさまざまな課題に対応するための知識、技術、そして専門性を深めていくことになります。

実習指導者の専門性と、実習生の真摯な取り組みが組み合わさることで、より質の高い社会福祉士が育成され、社会全体の福祉の向上に貢献することが期待されています。

参考資料

『相談援助実習』（厚生労働省が定める実習指定施設で180時間以上） - 社団法人日本社会福祉士養成校協会

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