真室川の伝承野菜

真室川の伝承野菜は、山形県真室川町の農家によって代々受け継がれてきた貴重な地域固有の野菜です。これらの野菜は、地域の風土や文化に根ざし、独特の風味と歴史を持っています。現在、16種類が真室川の伝承野菜として確認されています。

概要

真室川町では、古くから山岳信仰を背景とした年中行事が盛んに行われてきました。これらの行事には、地域で栽培された野菜が供え物や食材として用いられ、その中で独自の品種が育まれてきました。また、各農家が自家採種を繰り返してきたことも、多様な伝承野菜が残る要因となっています。

現在確認されている真室川の伝承野菜は以下の通りです。

ひろこ
雪割菜
赤にんにく
勘次郎胡瓜
弥四郎ささぎ
からどり芋
甚五右ヱ門芋
とっくりかぶ
黒五葉
青ばこ豆
最上かぶ
地かぶ
青黒
大黒豆
七夕白ささぎ
在来金時豆

各品種について

ひろこ

アサツキの若根で、ネギの仲間を指す古語「蒜(ひる)」が名前の由来とされています。冬から早春にかけて収穫され、雪を掘り起こして収穫されるものは、特に柔らかく甘みがあります。味噌和え、かき揚げ、吸い物、鍋物、天ぷらなどにして食されます。鮭延城址周辺が群生地として知られ、春にはひろこ摘みを楽しむ人々で賑わいます。

雪割菜

雪解けとともに伸び出す花芽（茎立ち）を食べるアブラナ科の野菜です。秋に種をまき、雪の下で越冬させます。雪を割るように成長することから名付けられました。苦味が少なく、ほのかな甘みと柔らかな食感が特徴で、お浸しや汁の実、炒め物などに利用されます。

赤にんにく

外皮が赤みがかっており、大粒で貯蔵性に優れています。一般的なにんにくに比べて香りがまろやかで、加熱すると甘みが増します。小川内地区の一部の農家で栽培されていましたが、近年栽培者が増えています。にんにく漬けや醤油漬け、素揚げ、鮎の干し焼きのタレなどに用いられます。

勘次郎胡瓜

ずんぐりとした形と、柔らかくみずみずしい食感が特徴です。一般的なきゅうりに比べて青臭さやえぐみが少なく、フルーツ感覚で食べられます。約120年前、谷地の沢地区の姉崎勘次郎家に鮭川村から嫁いだ女性が持ち込んだのが始まりとされ、姉崎家によって代々受け継がれてきました。

弥四郎ささぎ

完熟した種実が茶色いことから「茶ささぎ」とも呼ばれます。若芽は柔らかく味が良く、完熟した種実も煮豆などで食べられます。川船沢地区の佐藤弥四郎家に伝わったとされています。若狭は炒め物や汁の実、煮物に、種実は煮豆や白あんに用いられます。

からどり芋

里芋の仲間で、親芋を食用とするのが特徴です。ねっとりとしてきめ細やかな上品な味わいで、煮物や汁の実に用いられます。茎は芋がらとして保存食にされ、冬の伝統料理である納豆汁に使われます。

甚五右ヱ門芋

小川内地区の佐藤家に伝わる里芋で、佐藤家の旧屋号「甚五右ヱ衛門」が名前の由来です。外見はやや長めで、柔らかくぬめりが強いのが特徴です。煮物にすると均質な柔らかさで、親芋も美味しく食べられます。煮物以外に素揚げやコロッケにも用いられます。

とっくりかぶ

荒木地区の中川家でのみ栽培されてきた地かぶです。筋がなく柔らかく、水分が多いのが特徴です。生でも食べられるほど辛味が少なく、可食部が徳利のような形をしています。甘酢漬けや汁の実として用いられます。

黒五葉

葉が5枚であることから名付けられました。別名「いづつば豆」とも呼ばれます。黒豆煮にするほか、枝豆としても食べられます。

青ばこ豆

黄大豆の一種で、青黒よりも色が薄く、黄緑がかった色をしています。平べったい形をしており、白い模様が入るのが特徴です。

最上かぶ

形は多様ですが、最上地域北部で多く作られてきました。味噌漬けや甘酢漬けなどに使われます。

地かぶ

平岡の「長左エ門かぶ」や小川内の「ねずみのおっぱ」など、最上かぶと似ていますが、形や呼び名、肉質が異なる個性的な地かぶが多く存在します。

青黒

青大豆の一種で、他の大豆に比べて黒みがかっており、緑色が濃く味が良いのが特徴です。きな粉や節分の炒り豆としても用いられます。

大黒豆

豆の中央に雁が噛んだようなシワ模様があることから「雁喰い」とも呼ばれます。黒五葉よりも大きく、平たい形をしています。枝豆として食されるほか、打ち豆や煮豆、なますにも用いられます。

七夕白ささぎ

隠元豆の一種で、七夕の頃に種をまくことからこの名がつけられました。若莢は柔らかく香ばしい風味が特徴です。

在来金時豆

隠元豆の一種で、鮮やかな紅色が特徴です。町内全域で煮豆用として栽培されており、おこわに炊き込んだり、サラダの彩りにも用いられます。

真室川の伝承野菜は、地域の食文化を支える貴重な財産です。これらの野菜を守り、次世代に伝えていくことが重要です。

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