真幸くあらば

真幸くあらば

『真幸くあらば』は、小嵐九八郎による小説、およびそれを原作とした映画作品です。タイトルは万葉集に収められた有間皇子の歌に由来し、「無事であったなら」という意味が込められています。物語は、罪を犯した死刑囚と、彼によって婚約者を殺された女性という、決して相容れないはずの二人が織りなす、深く、そして純粋な愛を描いています。

小説

小嵐九八郎による小説は、1998年に講談社から刊行されました。死刑囚と被害者の婚約者という、社会的に隔絶された二人の関係性を、繊細な心理描写で描き出しています。

映画

2010年には、御徒町凧監督によって映画化されました。重いテーマを扱いながらも、美しい映像と音楽、そしてキャストの熱演によって、観る者の心を揺さぶる作品となっています。

あらすじ

南木野淳は、カップルを殺害した罪で死刑を宣告されます。控訴もせず、死刑を受け入れる覚悟の淳の元に、殺害された男性の婚約者である榊原茜（映画では川原薫）が面会に訪れます。茜は、婚約者の不実を知り、淳を憎むことができませんでした。面会を重ねるうちに、二人は惹かれ合うようになり、聖書を使った秘密の通信を始めるようになります。

登場人物とキャスト

南木野 淳
演 - 久保田将至
物語の主人公。過去に少年院に入っていた経験を持ちます。死刑宣告後は、絵を描くことに没頭します。
榊原茜（映画では川原薫）
演 - 尾野真千子
淳に婚約者を殺害されたクリスチャンの女性。淳が死刑宣告された後、彼の養母となり、面会を重ねます。聖書を使った秘密の通信を提案します。

映画では、テリー伊藤、ミッキー・カーチス、佐野史郎など、個性豊かな俳優たちが脇を固めています。

映画制作の背景

映画化にあたっては、その内容の重さから製作費が集まらず、企画から完成までに10年の歳月を要しました。詩人である御徒町凧の映画監督デビュー作であり、森山直太朗が初めて映画の音楽監督を務めた作品でもあります。

映画版エピソード

主演の尾野真千子が、演技に集中するため、全裸オナニーシーンの撮影に前張りをつけずに臨んだことが話題となりました。また、プロデューサーの奥山和由が、監督のOKが出た後にもう一度撮影を要望し、尾野が反発するも、最終的には監督の説得で2回目の撮影が行われました。

スピンオフ漫画

映画の公開後、江川達也によって映画の序章となるスピンオフ漫画「真幸くあらば-終わりと始まりの夏-」が執筆されました。江川達也作品としては珍しく、官能シーンはほとんど描かれていません。

『真幸くあらば』は、愛と憎しみ、赦しと救い、そして人間の心の深淵を描いた作品です。小説、映画、それぞれの形で、その世界に触れてみてはいかがでしょうか。

もう一度検索