眼窩下動脈

眼窩下動脈 (infraorbital artery)

眼窩下動脈は、頭部の動脈であり、顔面領域に血液を供給する重要な血管です。特に上顎骨を走行し、眼窩の下方を走ることで知られています。

経路

眼窩下動脈は、一般的には顎動脈の枝として知られていますが、場合によっては後上歯槽動脈から分岐することもあります。この動脈は、眼窩下神経とともに眼窩下溝および眼窩下管に沿って走行します。そして、眼窩下孔から顔面に現れ、その周囲の組織や構造に栄養を供給します。

枝

眼窩下動脈は、眼窩下管の中でいくつかの重要な枝を分岐させます。

1. 眼窩枝: この枝は、眼窩内の下直筋、下斜筋、涙嚢といった構造に血液を供給します。これらの筋肉や組織は、眼球の運動や涙液の生成に関与しており、眼窩枝の適切な血流供給がこれらの機能を正常に保つ上で重要です。

2. 前上歯槽動脈: この枝は、上顎の切歯、犬歯、臼歯といった歯牙や、上顎洞の粘膜に栄養を供給します。歯牙の健康維持や、上顎洞の正常な機能に不可欠な役割を果たします。

顔面においては、眼窩下動脈からいくつかの枝が眼窩の内眼角および涙嚢に向けて走行し、顔面動脈の枝である眼角動脈と吻合します。この吻合は、顔面領域の血流を確保し、血管が閉塞した場合でも血液が供給されるようにするバイパスの役割を果たします。また、鼻に向けて走行し、眼動脈の枝である鼻背動脈と吻合する枝もあります。さらに、上唇挙筋と口角挙筋の間を走行し、顔面動脈、顔面横動脈、頬動脈といった他の顔面の動脈とも吻合します。これらの吻合は、顔面の様々な部位への血流を相互に補完し合い、顔面全体の血液循環を安定させる上で重要な役割を果たします。

臨床的重要性

眼窩下動脈は、顔面領域における手術や外傷の際に注意が必要な血管です。損傷すると出血を引き起こす可能性があり、周囲の組織への血流供給が途絶えることで、様々な合併症を引き起こす可能性があります。歯科治療や美容整形手術など、顔面領域における処置を行う際には、眼窩下動脈の位置や走行を十分に理解しておくことが重要です。

まとめ

眼窩下動脈は、顔面領域に血液を供給する重要な動脈であり、眼窩の筋肉、上顎の歯、顔面の皮膚など、様々な組織や構造に栄養を供給しています。顔面動脈や眼動脈との吻合を通じて、顔面全体の血行を支える役割も担っています。臨床的にも重要な血管であり、顔面領域における手術や外傷の際には注意が必要です。

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