睡れる花嫁

睡れる花嫁

横溝正史が手掛けた短編推理小説『睡れる花嫁』は、探偵金田一耕助シリーズの一環で、1954年11月に最初に発表されました。作品の背景となるのは、都心を離れた高級住宅街S町で、画家・樋口邦彦と元ダンサーの妻・瞳の悲劇的な物語です。

あらすじ

樋口邦彦は、元ダンサーの瞳と共に穏やかな日々を送っていましたが、瞳が結核を患い、次第に彼女の姿は見えなくなります。樋口は近所の人々との接触を断ち、瞳の死後も彼女の遺体を自宅に置いて愛し続けるという異常な行動に出ます。この不審な行動に疑念を抱いた酒屋の少年・清水浩吉が樋口のアトリエに忍び込み、腐乱した瞳の死体を発見する事になります。瞳は病死していましたが、樋口は彼女の死体を手放さなかったのです。

数日後、巡査の山内はアトリエから漏れる不審な明かりを発見し、樋口に遭遇します。しかし、樋口は無言のまま山内を刺し、山内は重傷を負います。この事件がきっかけで、警察は樋口を手配し、捜査を開始しました。

捜査が進む中、金田一は次々と発生する不可解な事件と死体の関連を追い始めます。やがて、樋口がかつての妻の友人であるバー「ブルー・テープ」の女給・河野朝子の死体を盗み出し、それを利用して何かを企んでいる風であることが判明します。さらに、バーのマダム水木加奈子と彼女の養女しげるにも疑念が集まります。

樋口が関与する事件が次から次に起こり、謎の深まる中、金田一はさまざまな証言や証拠を元に推理を重ねていきます。やがて、樋口が加奈子としげるに殺害されたとの仮説が浮かび上がり、樋口の身に何が起こったのかが明らかにされます。

登場人物

• - 金田一耕助: 私立探偵。事件の核心に迫る。
• - 樋口邦彦: アトリエの所有者で、異常な愛を持つ画家。
• - 瞳: 樋口の妻。結核で亡くなる。
• - 清水浩吉: 酒屋の小僧で、事件に巻き込まれる。
• - 河野朝子: バーの女給で、死体が詐取される。
• - 水木加奈子: バーのマダム。
• - しげる: 加奈子の養女。

この小説は、悲劇的な愛の物語が展開されると同時に、人間の心理の暗い部分を描写しており、横溝正史らしい緊張感が醸し出されています。樋口の狂気と愛の結末は、読者に深く印象を残すことでしょう。

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