矢原徹一

矢原 徹一

日本の植物学者として、生態学と進化生物学を専門とする矢原徹一（やはら てつかず）は、1954年5月1日に生まれました。長年にわたり大学教育と研究に従事し、現在では九州大学の名誉教授の称号を得ています。

経歴

福岡県で育った矢原氏は、京都大学理学部にて学びを深め、同大学院理学研究科の博士課程で単位を取得し退学しました。研究者としてのキャリアは東京大学からスタートし、理学部附属植物園で助手として勤務した後、その日光分園で講師を務めました。続いて東京大学教養学部で助教授を務め、その後に九州大学理学部の教授へと移籍しました。2000年には、九州大学理学研究院の教授に就任すると同時に、「持続可能な社会のための決断科学センター」のセンター長も務めるなど、多岐にわたる教育・研究・運営に貢献しました。大学での活動に加え、日本の生物多様性保全においても重要な役割を担い、特に絶滅の危機にある植物に関する問題を専門的に検討する第一専門委員会では委員長を務め、その保全策の提言と実施に尽力しました。

研究と業績

矢原氏の研究は、植物の進化、特に花の性システムや送粉生態に関する深い洞察をもたらしました。また、生物多様性の保全生態学における理論と実践の両面で重要な貢献をしています。こうした長年の学術的な業績と、環境問題への貢献が認められ、2009年には「みどりの学術賞」を受賞しました。学術論文に加え、一般向けの啓発書や専門書など、数多くの著作を通じて自身の研究成果や生態学・進化生物学の知識を広く社会に発信しています。

著作活動

研究成果をまとめた専門書から、生態学や環境問題を一般に分かりやすく解説する啓蒙書まで、その著作活動は非常に幅広い範囲に及びます。代表的な単著としては、花の性の進化を探る『花の性 その進化を探る』や、持続可能な社会の実現に向けた提言を含む『決断科学のすすめ』などがあります。また、他の研究者との共編著や監修書も多数手がけており、保全生態学の入門書や絶滅危惧植物図鑑など、生物多様性の保全に関わる重要な書籍を世に送り出しています。さらに、ダーウィンの著作である『植物の受精』の翻訳を行うなど、古典的な生物学文献の紹介にも貢献しています。

現在の活動

大学での教育・研究活動を終えた後も、科学と社会のつながりを強化する活動に積極的に関わっています。2020年10月からは、福岡市科学館の第2代館長に就任し、科学の普及啓発活動の最前線に立っています。研究者、教育者、そして科学コミュニケーターとして、次世代への科学知識の継承と、持続可能な社会の構築に向けた提言を続けています。

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