矢吹萬壽

矢吹萬壽の業績と影響

矢吹萬壽（やぶき かずとし、1923年3月27日 - 2011年12月13日）は、日本の農学者であり、特に農業気象学や生物環境調節工学において重要な業績を残しました。彼は大阪府立大学名誉教授であり、元学長としても知られています。彼の専門は、農業の気象を理解し、環境を調整する技術の研究に多くの時間を捧げました。

学歴と初期のキャリア

1945年、九州帝国大学農学部農業工学科に入学した矢吹は、鈴木清太郎教授の下で学びました。卒業後、農林省農事試験場気象部でキャリアをスタートさせ、1955年には大阪府立大学の助教授に就任しました。彼の研究は、気象の影響と農業との関係を深く掘り下げるものであり、特に六甲山系での気象観測や模擬実験を通じて「六甲颪（六甲おろし）」のメカニズムを解明しました。この研究は、未だに気象被害の一因とされる山越え気流の発生を理論的に明らかにした重要なものでした。

国内外での活動

1960年にはイギリスに留学し、ローザムステッド農業試験場でJohn Monteithと出会います。この経験により、植物の光合成に対する研究の重要性を認識し、帰国後はその分野に重きを置くこととなりました。特に東南アジアの熱帯雨林における光合成量の測定や、植物群落の炭素固定量を算定する手法の確立に貢献しました。彼が発表した「群落CO2 フラックス測定法」は、後の研究においても非常に有用なものとなりました。

また、環境問題に対しても早くから取り組み、大阪府公害防止条例や各市町村の公害関連条例の制定に貢献しました。彼の努力は、関西地域における公害対策の基盤を築くものとなりました。これらの活動は、彼の科学者としての役割だけでなく、社会の一員としての責任をも果たしたことを示しています。

学術・社会活動と受賞歴

矢吹は日本農業気象学会の会長、日本生物環境調節学会の会長など、多くの学会や研究協会に参加していました。その中で、環境問題に対しての意識を高めるための活動も行い、社会全体への影響力を持つ存在となったのです。彼は多数の受賞歴を有し、農学博士号を取得後、様々な名誉ある賞を受けました。特に1990年には紫綬褒章を受章し、その功績が広く認められました。

晩年と影響

2011年に肺癌で逝去した際、多くの学生や同僚は彼の業績と人柄を思い出し、惜しまれました。農業気象学や環境学の発展に寄与した矢吹萬壽は、今日の農学の分野における重要な先駆者としてその名を刻んでいます。彼の研究成果は、現在の農業においても極めて重要であり、持続可能な農業を考える上での指針となっています。彼の知識と経験は、多くの世代にわたって後輩研究者に受け継がれています。

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