矢木勉

矢木 勉（やぎ つとむ）は、日本の造園分野において顕著な足跡を残した地方公務員です。1923年または1924年に神戸市で生を受けた彼は、特に郷里である神戸市における都市緑地の整備と、花時計に関する深い造詣およびその普及活動に貢献しました。

京都大学農学部の林学科を卒業した矢木氏は、その後神戸市役所に入庁し、公務員としての道を歩み始めます。長年にわたり、彼は都市の環境整備に関わる業務に携わり、公園緑地部門でその専門的な知識と経験を活かしました。特に公園緑地部長という重要な役職では、市民の憩いの場である公園や、都市の景観を彩る緑地の整備計画立案や推進を主導しました。彼の尽力により、神戸市の緑豊かな都市空間の創出と維持に貢献がなされたと言えます。

矢木氏の業績は広く評価されており、その功績を称え、1980年には第6回日本公園緑地協会北村賞が授与されました。この賞は、公園緑地分野での優れた活動や研究を行った個人や団体に贈られるものであり、彼の長年にわたる取り組みが専門分野において高く評価された証です。

彼の活動の中で特に注目されるのは、花時計に関する熱意と研究です。矢木氏は花時計の魅力を深く理解し、その歴史、技術、デザインに関する研究を進めました。その成果は複数の著作として発表されており、この分野の権威としての地位を確立しています。2001年に上梓した『日本の花時計』（山と渓谷社）は、日本国内の花時計に関する詳細な情報を集約した初の体系的な書籍の一つと考えられます。また、2011年には『花時計賛歌』（神戸新聞総合出版センター）を刊行し、花時計への賛辞と、その文化的な価値や個人的な思いを綴っています。さらに2018年には、『世界と日本の花時計』（神戸新聞総合出版センター）を英文併記で出版し、国内外の花時計を紹介することで、その魅力をより広範な読者に伝えようと試みました。これらの著作は、花時計の存在意義を啓蒙し、その普及に大きく貢献しました。

著作活動に加えて、矢木氏は「日本花時計の会」を設立し、その会長として花時計の愛好家や研究者間の交流、情報共有の場を提供しています。この会の活動を通じて、彼は花時計の文化的な継承と発展に寄与しています。会長という立場は、彼がこの分野における第一人者であることを明確に示しています。

矢木勉氏は、地方公務員として都市の緑地整備に貢献する一方で、花時計という特定のテーマに対して深い情熱を傾け、研究者、著述家、そして団体のリーダーとして多角的に活動しました。彼のキャリアは、行政の実務と専門分野における探求心を兼ね備えた人物像を映し出しており、日本の造園行政と花時計文化の発展に大きな足跡を残しました。

なお、彼の活動に関する情報は、『農林時報』、『日本林学会誌』、『官報』、『林政』、『都市政策』、『神戸洋服百年史』など、様々な文献に掲載されていることが確認できます。これらの参考文献リストは、彼の活動の範囲の広さや、多方面からの関心を集めていたことを物語っています。

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