矢田寺

矢田寺の概要

矢田寺（やたでら）は奈良県大和郡山市の矢田町に位置する高野山真言宗の寺院です。山号は矢田山であり、正式な寺名は金剛山寺（こんごうさんじ）です。この寺院は「アジサイ寺」としても知られ、境内には約60種類、約10,000株のアジサイが美しく咲き誇ります。

また、矢田寺とは別に京都市中京区の金剛山矢田寺も存在しますが、そちらは異なる宗派に属しています。歴史によれば、奈良時代初期に当寺の別院として開かれたとされています。

歴史的背景

寺伝によると、矢田寺は大海人皇子が壬申の乱での勝利を祈願するために矢田山に登ったことから始まり、即位後の天武天皇5年（676年）に智通という僧が天皇の命により寺院を建立しました。最初の七堂伽藍と四十八坊が造営され、十一面観音菩薩と吉祥天が安置されました。

弘仁年間（810年 - 824年）には満米上人によって地蔵菩薩が本尊として安置され、その後は地蔵信仰が中心的な役割を果たすようになりました。戦乱の時代を経て、多くの僧坊が焼失しましたが、現在では矢田寺北僧坊、矢田寺大門坊、矢田寺念仏院、矢田寺南僧坊という4つの僧坊が残っています。特に、矢田寺大門坊は容眞御流（ようしんごりゅう）の家元として華道の研究が活発です。

矢田寺の名は、古くからこの地が「矢田の里」として知られていたことに由来しています。また、矢田寺の地蔵菩薩は「矢田型地蔵」と呼ばれ、その右手が阿弥陀如来の来迎印の形をしているのが特徴です。

境内の構成

矢田寺の境内には様々な文化財が存在します。以下に主要な建物や構造物を紹介します。

• - 本堂: 奈良県指定の有形文化財で、1712年に大規模な修理が行われました。
• - 鐘楼: 奈良県指定有形文化財として保存されている梵鐘があります。
• - 十三重石塔: 歴史的な価値のある石塔です。
• - 開山堂: 開山を祀る場所。
• - 御影堂: 天武天皇像を安置しています。
• - あじさい園: 約10,000株のアジサイが植えられ、特に6月には多くの観光客が訪れます。
• - その他の建物: 舎利堂、大師堂、閻魔堂、菩薩堂、講堂など、宗教的な意義を持つ多くの建物があります。

また、春日神社も境内にあり、かつての鎮守社として重要文化財に指定されています。その他にも、味噌なめ地蔵やカンカン地蔵などの特色ある像が存在します。

アクセス

矢田寺へは近鉄郡山駅からのアクセスが一般的です。近鉄郡山駅から奈良交通バス（20系統）を利用し、約20分で「矢田寺」下車後、徒歩7分ほどで到着します。ただし、本数が限られているため、計画的に移動することが必要です。6月の紫陽花シーズンには臨時バスが運行され、訪問者に便利な移動手段が提供されます。様々な宗教的、文化的背景を持つ矢田寺は、訪れる人々に豊かな体験をもたらす場所です。

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