矢野昌裕

矢野 昌裕

矢野 昌裕（やの まさひろ）は、1956年11月4日に福岡県で生まれた、日本の著名な農学者です。九州大学で農学を修め、同大学大学院農学研究科の博士課程を1985年に修了し、農学博士の学位を取得しました。現在は、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構（農研機構）の次世代作物研究開発センター所長を務められています。

経歴

1979年に九州大学農学部農学科を卒業後、1985年に同大学大学院農学研究科で博士課程を修了しました。卒業後は農林水産省に入省し、1986年に農業研究センターの研究員としてそのキャリアをスタートさせます。翌1987年には、北陸農業試験場の作物部へ異動し、研究活動を継続しました。1994年には農業生物資源研究所の企画調整部主任研究官に就任。1998年には同研究所分子遺伝部のゲノム複製研究室室長を務めるなど、要職を歴任していきます。

2001年に独立行政法人化された農業生物資源研究所では、分子遺伝研究グループの応用遺伝研究チームを率いるチーム長に就任。また、同年からは筑波大学の連携大学院生命環境科学研究科にて客員助教授を兼任し、教育・研究指導にも携わりました。その後も研究組織の責任者として、2006年にはQTLゲノム育種研究センター長、2011年には農業生物先端ゲノム研究センター長を務めます。組織再編を経て、2014年には国立研究開発法人となった農業・食品産業技術総合研究機構の作物研究所所長に就任。そして2016年からは、現在の役職である次世代作物開発研究センター所長として、日本の作物研究、特に先進的な育種技術開発をリードしています。

研究業績と受賞

矢野博士の主要な研究テーマは、イネの遺伝子やゲノム情報解析を進め、これを活用して優れた形質を持つ新品種を開発するための育種技術を確立することです。ゲノム科学の成果を実際の品種改良に結びつける研究は、食料生産の安定化や品質向上に不可欠であり、その貢献は国内外で高く評価されています。

その研究活動の中で、数々の賞を受賞しています。1995年には日本育種学会奨励賞を受賞し、若手研究者としての才能を認められます。2002年には文部科学大臣賞研究功績者として表彰され、2004年には第11回日本植物生理学会論文賞を受賞しました。2007年には日本育種学会賞、2013年には日本農学会から日本農学賞および読売農学賞を受賞するなど、主要な農学・育種学関連の賞を多数獲得しています。

中でも特筆すべきは、2019年4月に受賞した第13回みどりの学術賞です。この賞は、農林水産分野における傑出した研究者に贈られる栄誉あるもので、矢野博士は「イネゲノム情報の解析と品種改良への応用」に関する長年の功績が高く評価されました。これは、基礎研究で得られたゲノム情報を、実用的な品種改良に結びつけた研究が、日本の農業の発展に大きく寄与するものであることを示しています。

著書・論文・所属学会

研究成果は多くの論文として発表されており、共著者として『イネゲノム配列解読で何ができるのか』（農山漁村文化協会）といった著書も手がけています。また、日本の主要な農学関連学会である日本育種学会に所属し、研究活動の普及や発展にも貢献しています。

矢野昌裕博士は、イネを中心とした作物ゲノム研究のフロンティアを開拓し、その成果を農業現場へ還元する架け橋となる研究を推進することで、日本の農学分野に多大な貢献を続けています。

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