石崎嘉彦

石崎 嘉彦（いしざき よしひこ）

石崎嘉彦（1948年生まれ）は、哲学、倫理学、そして政治哲学を専門とする日本の学者です。長年にわたり大学で教鞭を執り、研究活動を展開してきました。現在は摂南大学の名誉教授であり、大和大学の教授として教育・研究に携わっています。

生い立ちと学問への道

1948年、京都府相楽郡木津町（現在の木津川市）に生まれました。学問の道を志し、鹿児島大学法文学部で倫理学を専攻し、1974年に卒業します。さらに探求を深めるため、大阪大学大学院文学研究科に進学。1982年には博士課程の単位を取得して退学しました。この時期に培われた哲学や倫理学の基礎が、その後の研究活動の基盤となります。

研究者・教育者としての歩み

大学院での学びを終えた後、石崎嘉彦は摂南大学に奉職し、言語文化学部で助教授に就任しました。その後、教授へと昇格し、同学部が外国語学部へと改組された後も引き続き教授として教壇に立ち続けました。教育者として多くの学生を指導する傍ら、自身の研究も精力的に進めます。特に政治哲学の研究に深く没頭し、その成果として2009年に学位論文『倫理学としての政治哲学：ひとつのレオ・シュトラウス政治哲学論』を広島大学に提出し、文学博士の学位を取得しました。この論文は、彼が長年取り組んできたレオ・シュトラウス研究の一つの集大成と言えます。

2014年に摂南大学を定年により退職し、これまでの功績が認められ、同大学の名誉教授の称号を授与されました。退職後もその学識は求められ、2016年からは大和大学政治経済学部の教授として、再び教壇に立っています。教育と研究に対する情熱は衰えることなく、現代社会が抱える倫理的、政治的な課題に対する洞察を提供し続けています。

主な研究テーマと業績

石崎嘉彦の研究は、哲学、倫理学、政治哲学という広範な領域に及びますが、その中でも特にレオ・シュトラウスの政治哲学は重要なテーマとなっています。シュトラウスの思想を深く掘り下げ、現代におけるその意義を問い直す研究は、多くの著作に結実しています。

彼の主な著作としては、博士論文を基にした『倫理学としての政治哲学：ひとつのレオ・シュトラウス政治哲学論』のほか、現代社会の人間観を論じた『ポストモダンの人間論：歴史終焉時代の知的パラダイムのために』、ヘーゲルとシュトラウスを比較考察した『政治哲学と対話の弁証法：ヘーゲルとレオ・シュトラウス』などがあります。これらの著書を通じて、人間存在、倫理、政治といった根源的な問題に対する独自の視点を示しています。

また、複数の研究者との共編著も多数あり、『人間論の21世紀的課題』『知の21世紀的課題』『ポストモダン時代の倫理』『グローバル世界と倫理』といった書籍では、現代社会の様々な倫理的課題に対して、応用倫理学の視点から考察を加えています。

特筆すべきは、海外の重要な哲学書や政治哲学書の翻訳に多数関わっている点です。スタンレー・ローゼン、リチャード・ノーマン、ハインリッヒ・マイアーといった著名な研究者の著作の監訳を手がける一方で、レオ・シュトラウスの主要な著作の翻訳も数多く行っています。中でも、『自然権と歴史』『政治哲学とは何か』『僭主政治について』『リベラリズム 古代と近代』など、シュトラウスの代表的な著作の翻訳に深く関与しており、日本の研究者や読者がシュトラウス思想に触れる上で、彼の翻訳業績は極めて重要な貢献となっています。

これらの広範な活動を通じて、石崎嘉彦は日本の哲学・倫理学・政治哲学の発展に寄与し続けています。

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