石川幹人

石川幹人：科学と疑似科学の境界を探求する研究者

石川幹人氏は、1959年生まれの日本の研究者で、明治大学情報コミュニケーション学部教授を務めています。工学博士の学位を持ち、認知情報論と科学基礎論を専門としています。彼の研究領域は非常に多岐にわたり、生物進化論の心理学や社会学への応用から、人工知能（AI）や心の科学の基礎論研究、科学コミュニケーションおよび科学リテラシー教育、さらには超心理学を例にした疑似科学研究など、生物学、脳科学、心理学といった広範な分野をカバーしています。

超心理学研究の第一人者

石川氏は、日本の大学で唯一の超心理学研究室である「メタ超心理学研究室」を主宰し、超心理学研究をライフワークとしています。念力や透視といった現象に対し、科学的な視点からアプローチを試みています。一方で、ASIOS（超常現象の懐疑的調査のための会）の発起人メンバーでもあり、懐疑的な立場から超常現象を検証する活動も行っています。

科学リテラシー教育への貢献

石川氏は、科学リテラシー教育や科学コミュニケーションの啓蒙活動にも力を入れています。2014年からは、「科学っぽい装いをしている」が、科学であるか疑わしいものの科学性評定サイト「疑似科学とされるものを科学的に考える｜Gijika.com」を運営し、科学的な根拠に基づかない情報に対する批判的思考を養うための情報提供を行っています。この活動が評価され、2015年には科学技術社会論学会にて実践賞を受賞しました。

多岐にわたる研究と著作

石川氏は、超心理学、疑似科学、進化心理学などに関する多くの著書を執筆しています。『人はなぜだまされるのか』『「超常現象」を本気で科学する』『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』『人は感情によって進化した』など、一般読者にもわかりやすい言葉で、科学的な思考の重要性や、社会に蔓延る誤った情報に対する注意喚起を行っています。

略歴と業績

東京工業大学で応用物理学を学び、同大学院で物理情報工学の修士号を取得後、松下電器産業（現パナソニック）で映像情報システムの設計開発に携わり、新世代コンピュータ技術開発機構で人工知能研究に従事しました。1995年には東京農工大学大学院にて、人工知能技術を遺伝子情報処理に応用する研究で工学博士号を取得しています。1997年に明治大学文学部の助教授となり、2004年より情報コミュニケーション学部教授を務めています。2018年4月からは明治大学大学院長も兼任しました。

「疑似科学」に対する情報拠点サイトの立ち上げ

石川氏らの研究グループは、2019年に信州大学の研究グループとともに「疑似科学」に対するオンライン上の情報拠点サイト「疑似科学とされるものを科学的に考える｜Gijika.com」を立ち上げました。このサイトでは、科学的根拠がないにもかかわらず、あたかも科学的に正しいと実証されたように見せかけるものの「科学性」を評価し、解説を行っています。また、掲示板や疑似科学に対する科学リテラシーをつけるためのオンライン教材が実装され、科学性評定サイトを媒介にした科学コミュニケーションを実践する場として運用されています。

石川幹人氏は、超心理学という特異な分野を研究する傍ら、科学リテラシー教育や疑似科学に対する批判的検討を通じて、社会における科学の健全な発展に貢献している研究者であると言えるでしょう。

もう一度検索