石川竜一

石川竜一（いしかわ りゅういち）

1984年、沖縄県生まれの日本の写真家。類まれなる経歴を経て写真の世界に入り、日本の現代写真において重要な存在感を示しています。

異色のキャリアパス

石川竜一のキャリアは、一般的な芸術家のそれとは大きく異なります。中学校時代から本格的にボクシングに打ち込み、学生アスリートとして才能を発揮しました。2002年には高知県で開催された国民体育大会に出場し、見事に全国3位という成績を収めています。スポーツの世界で肉体を鍛え、勝負に挑む日々を送る中で、沖縄国際大学総合文化学部社会文化学科に進学。大学在学中に写真と出会い、表現することの魅力に目覚めます。卒業後、写真家への道を本格的に歩み始め、2008年には前衛舞踊家のしば正龍に師事。次いで2010年には写真家の勇崎哲史に師事し、写真技術や表現に対する洞察を深めました。また、2011年には、日本を代表する写真家である東松照明が主宰したデジタル写真ワークショップに第3期生として参加し、その成果を修了写真展で発表するなど、精力的に活動の基礎を築き上げました。

写真家としての評価の確立

石川竜一が写真家としてその才能を広く認められるようになったのは、2010年代に入ってからです。2012年、故郷である沖縄の人々の日常や表情を独自の視点で捉えた写真シリーズ「okinawan portraits」が、若手写真家の登竜門として知られるキヤノン写真新世紀において佳作を受賞しました。この受賞は、その後の活躍の大きな足がかりとなります。

そして、2014年度には、彼のキャリアにおいて決定的な評価を得ます。圧倒的なスケールで沖縄の風景を写し取った作品と、そこで生きる人々のポートレートを組み合わせた写真集『絶景のポリフォニー』が、日本の写真界で最も栄誉ある賞の一つである第40回木村伊兵衛写真賞を受賞しました。この受賞により、石川竜一は一躍日本の現代写真シーンにおける注目の写真家として広く認知されることとなりました。彼の作品は、沖縄という特定の場所を深く掘り下げながらも、人間存在や自然との関係といった普遍的なテーマを示唆しています。

表現活動の広がり

写真制作を主軸としながらも、石川竜一の表現活動は写真という領域に留まりません。特に、師事した前衛舞踊家のしば正龍との関わりは深く、写真集のテーマにもなっています。2013年には、しば正龍の独演会にコンテンポラリーダンスのソロパフォーマーとして出演するなど、自身の身体を使った表現にも積極的に挑戦しています。アスリートとしての過去や、しば正龍から受けた影響は、被写体の身体性や内面に深く切り込む彼の写真表現にも通底していると言えるでしょう。近年では、2024年公開の映画『WILL』に出演するなど、活動の幅をさらに広げています。

主な写真集

これまでに多数の重要な写真集を刊行しています。初期の自費出版から、受賞作を含む代表的な作品集まで、彼の活動の軌跡をたどることができます。

『SHIBA踊る惑星』（2010年、自費出版）
『しば正龍 女形の魅力』（2013年、自費出版）
『RYUICHI ISHIKAWA』（2014年、写真集形作品）
『絶景のポリフォニー』（2014年、赤々舎）
『okinawan portraits 2010-2012』（2014年、赤々舎）
『adrenamix』（2015年、赤々舎）
『CAMP』（2016年、SLANT）
『okinawan portraits 2012-2016』（2016年、赤々舎）

自身のルーツである沖縄を主な被写体としながらも、その表現は風景、人間、身体といった多岐にわたり、写真の枠を超えた表現への探求を続ける写真家として、今後の活動が期待されています。

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