石川純

石川 純（いしかわ じゅん）氏は、1922年10月6日に生まれ、2005年2月21日にその生涯を終えた、日本の医学および歯学の分野で顕著な業績を残した人物です。医師と歯科医師の両方の資格を持ち、特に歯周疾患に関する研究において、わが国の歯学界を牽引しました。

氏の学究生活は、現在の東京医科歯科大学にあたる東京医学歯学専門学校に始まります。1945年にまず歯学科を卒業し、その後も研鑽を続け、1949年には同校の医学科も卒業するという異色の経歴を持ちます。この医学と歯学の両分野にわたる深い理解が、その後の研究活動の基礎となりました。

卒業後は、母校である東京医科歯科大学で助手、講師、助教授とキャリアを重ねます。その後、北海道大学に移り、助教授を務めた後、1970年に同大学の予防歯科学講座の教授に就任。さらに1971年からは歯科保存学第二講座の教授として、教育と研究の最前線に立ちました。1978年には北海道大学歯学部長という重責を担い、大学運営にも尽力しました。長年の功績が認められ、1986年には北海道大学名誉教授の称号を授与されています。氏の墓所は、東京都府中市にある多磨霊園にあります。

研究者としては、特に歯周病、すなわち歯周疾患の研究で国際的にも名を知られました。この分野における深い知見と貢献は多岐にわたり、数多くの論文や著作として結実しています。また、教育者としても多くの歯科医師や歯学研究者を育て上げました。

国内外の学術団体においてもリーダーシップを発揮しました。日本歯周病学会では元名誉会員、元常任理事を務め、日本歯科保存学会でも元理事を務めるなど、国内の主要な学会で要職を歴任しました。さらに、国際的な学術組織であるInternational Academy of Periodontology（国際歯周病学会）では会長を務めるなど、日本の歯学のレベルを国際社会に示す役割も果たしました。

石川氏の業績は、多数の著作によっても後世に伝えられています。専門家向けの高度な教科書から、一般市民向けの啓発書まで、その活動範囲は広範でした。

主な著作には以下のようなものがあります。

小野巌、石川純、日本歯科衛生士会『歯ブラシの使い方指導の手引き』（医歯薬出版、1963年）
石川純『歯ブラシ : その上手なつかい方』（永末書店、1965年）
今川与曹、石川純『臨床歯周病学』（医歯薬出版、1968年）
H.M.ゴールドマン, D.W.コーエン著、石川純、佐藤徹一郎監訳『ゴールドマン＆コーエン 歯周治療学』（医歯薬出版、1979年）
石川純、中静正 編『歯周治療学』（医歯薬出版、1981年）
石川純、中静正 編『簡明歯科学ノート 歯周治療学』（医歯薬出版、1985年）
石川純『人間はなぜ歯を磨くか』（医歯薬出版、1986年）
石川純 編『歯周治療学』（第2版）（医歯薬出版、1992年）

これらの著作からは、基礎研究だけでなく、臨床応用に重点を置き、さらに公衆衛生的な観点から歯の健康を守ることの重要性を啓発していた姿勢がうかがえます。

石川純氏は、医師、歯科医師、歯学者としての多角的な視点と、教育者、研究者、そして国際的なリーダーとしての活動を通じて、日本の歯科医療、特に歯周病学の発展に計り知れない貢献をした人物として記憶されています。

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