石本隆一

石本隆一

日本の歌人、石本隆一（いしもと りゅういち）氏は、1930年12月10日に生まれ、2010年3月31日にその生涯を終えました。戦後の短歌界で重要な役割を果たした歌人として知られています。

生い立ちと文学への道

石本氏は、東京市芝区の白金志田町で鉄工所を営む家庭に育ち、第二次世界大戦中は茨城県樺穂村へ疎開して少年時代を過ごしました。茨城県立真壁高等学校を卒業後、短期間中学校の助教諭を務めましたが、その後、早稲田大学第一文学部英文科に進学。大学ではイギリス演劇を専攻し、文学的な素養を深めました。この学生時代が、歌人としての出発点となります。大学在学中に、歌人・香川進氏が主宰する歌誌『地中海』に参加し、短歌の世界へ本格的に足を踏み入れました。さらに、大学院に進学してからは早稲田大学短歌会でも活動し、会員の小野茂樹氏を『地中海』に誘うなど、歌人仲間との交流を深めました。

歌人としての確立と活動

大学院を中途退学した後、再び東京商業高等学校の教諭として教壇に立ちましたが、1964年に角川書店に入社。「短歌」編集部に勤務することとなります。出版社の編集者として短歌に関わる傍ら、自身の創作活動も精力的に行いました。同年、第一歌集『木馬騎士』を刊行し、第9回現代歌人協会賞の候補となります。続く1971年には、第二歌集『星気流』を発表。この歌集は、第18回日本歌人クラブ推薦歌集（現在の日本歌人クラブ賞）に選ばれ、歌人としての評価を確立しました。

翌年の1972年には、自身の歌誌『氷原』を創刊し、主宰として多くの歌人を育て、短歌の普及・発展に尽力します。1976年には、歌集『蓖麻（ひま）の記憶』により、権威ある第12回短歌研究賞を受賞。これにより、石本隆一氏の名は短歌界に確固たる地位を築きました。1984年には角川書店を退社してからは、文筆活動に専念する生活に入り、さらに創作と評論、普及活動に力を注ぎました。

多様な貢献と著作

文筆専業後も、石本氏は様々なメディアで短歌欄の選者を務め、短歌の裾野を広げることに貢献しました。『週刊サンケイ』、『高三コース』、『学文ライフ』、『月刊自由民主』、『自由新報』、『公明新聞日曜版』、『禅の友』など、その活動の場は多岐にわたります。

石本氏の著作は、歌集と評論集を中心に多数刊行されています。初期の代表作である『木馬騎士』、『星気流』、『蓖麻の記憶』といった歌集で高く評価され、その後も晩年まで意欲的に創作を続けました。それらの歌集は没後、『花ひらきゆく季』、『わが命ちさく限りて』、そして集大成となる『石本隆一全歌集』としてまとめられています。評論活動も精力的に行い、『白日の軌跡』、『律の流域』、『碑文谷雑記』といった評論集を発表。その多角的な視点からの評論は『石本隆一評論集成』に収められています。『短歌実作セミナー』のような実作者向けの指導書や、『現代歌人250人』、『日本文芸鑑賞事典』といった重要な共編著にも携わり、短歌界や日本文学研究全般にわたる貢献も行いました。

石本隆一氏は、歌作、編集、指導、評論、普及活動と、多角的に現代短歌に関わり、その発展に寄与した功績は大きいと言えるでしょう。その作品と活動の軌跡は、現代短歌史において重要な位置を占めています。

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