石硤尾大火

石硤尾大火：香港における住宅政策転換の契機

1953年12月25日、クリスマスの夜に香港・九龍の石硤尾で発生した大火災は、香港の歴史において重要な転換点となりました。この火災は、木造バラックが密集する地域で発生し、広範囲に被害をもたらしただけでなく、その後の香港の住宅政策に大きな影響を与えたのです。

火災発生の背景

第二次国共内戦後、中国大陸から多くの難民が香港に流入し、九龍北部の山麓に木造のバラックを建てて住み始めました。これらのバラックは密集しており、火災が発生しやすい状況でした。実際に、1951年には九龍城東頭邨で大規模な火災が発生しており、住民たちは火災に対する警戒を強めていました。当時の香港では、クリスマスは現在ほど盛大に祝われていたわけではありませんでした。

火災の発生と拡大

1953年12月25日午後9時25分、白田邨の木造家屋二階にある靴製造作業場で灯油ランプが転倒し、引火したことが火災の原因でした。最初は小規模な火災でしたが、すぐに近隣の家屋に燃え広がり、強風にあおられて瞬く間に数百戸に延焼しました。午後10時には白田邨から東湾、正街へと燃え広がり、火災は制御不能な状態に陥りました。

消防局長のウィリアム・ゴーマンは事態を重く見て、香港島からも消防車を派遣し、予備の消防隊員も招集しました。しかし、消防隊が到着した午後11時10分には、白田邨はほぼ全焼しており、木造・石造の区別なく家屋は灰燼と化していました。火災は翌日の午前2時30分にようやく鎮火しましたが、その被害は甚大でした。

火災による被害

火災は、白田上邨、白田下邨、石硤尾邨、窩仔上邨、窩仔下邨、大埔邨を含む広範囲に及び、焼失面積は41エーカー（約16.4ヘクタール）に達しました。この大火で3人が死亡、51人が負傷し、約2580軒の木造家屋が焼失し、約1万2000世帯、5万8203人が家を失いました。

被災者支援の動き

大火の被害者たちを支援するため、さまざまなチャリティー活動が行われました。その一つとして、1954年1月17日には、太極拳の呉公儀と白鶴拳の陳克夫が武術競技会を開催し、集まった27万香港ドルを寄付しました。

公営住宅の建設

この火災により広大な地域が廃墟と化したため、香港政庁は被災者たちを収容するために、火災現場の近くに2階建ての長屋「平房」を建設しました。これらの平房は、当時の工務局長セオドア・ルイス・ボウリングの中国名から「包寧平房」と呼ばれました。その後、火災跡地には6階から7階建てのH字型の集合住宅29棟が建設され、被災者たちが再定住しました。この再定住区は石硤尾再定住区（後の石硤尾邨）として知られています。特に9棟から12棟は国際連合からの寄付によって建設されました。

この大火をきっかけに、香港政庁は公共住宅の建設に力を入れるようになり、下層市民に住居を提供する政策を推進しました。この動きが、後の香港住宅委員会の前身である香港屋宇建設委員会の設立につながりました。石硤尾大火は、単なる災害ではなく、香港の社会構造と住宅政策を大きく変えるきっかけとなったのです。

関連事項

美荷楼: 石硤尾再定住区に建設された初期の公共住宅の一つで、歴史的価値を持つ。
河水山大火: 1961年にシンガポールで発生した同様の大規模火災。その後の公共住宅開発につながった点で、石硤尾大火との共通点がある。

参考文献

《從深水步到深水埗》，深水埗區公民教育委員會，1998年

外部リンク

香港木屋大火
* 石硤尾大火 - hkheadline.com: 画像多数

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