砂のミラージュ

砂のミラージュ（Espejismo）

1972年にペルーで製作され、翌年の1973年に公開された映画。スペイン語原題は『Espejismo』。ペルー映画界を代表するアルマンド・ロブレス・ゴドイが監督と脚本を務めた作品であり、主演はセザール・エリアス。日本では日本ヘラルド映画の配給によって公開された。

この物語は、広大な砂漠にほど近い小さな村を舞台に展開される。主人公の一人であるヘルナンは、貧しい境遇にありながらも、いつかサッカー選手になることを夢見て日々を過ごす少年である。彼の友人であるホセは、村の広大な敷地を持つ邸宅にたった一人で暮らしている。

物語の核心は、ホセが抱えるある幻影にある。彼は、砂漠の中をまるで何かから逃れるかのように、よろめきながらも必死に走り続ける一人の男の姿に取り憑かれていた。この不可解な幻影は一体誰なのか。ホセは現実と幻想の曖昧な境界をさまよいながら、その謎の答えを追い求めることになる。

幻影の探索が進むにつれて、かつてこの地で起きた凄惨な出来事が徐々に明らかになっていく。それは、苛酷な運命によって引き裂かれてしまった一組の男女による、哀しい愛の物語であった。彼らの過去の因縁、そして避けられなかった悲劇が、ホセが見る幻影と複雑に絡み合いながら浮かび上がってくる。

ゴドイ監督は、詩的で幻想的な映像表現を駆使し、砂漠という乾いた風景の中に人間の内面世界や過去の記憶を描き出す。現実と非現実が交錯する中で、登場人物たちの心理や運命が深く掘り下げられていく。

スタッフ

製作: ベルナルド・バティアフスキー
監督: アルマンド・ロブレス・ゴドイ
脚本: アルマンド・ロブレス・ゴドイ
撮影: マリオ・ロブレス・ゴドイ
音楽: エンリケ・ピネラ

キャスト

ホアン・ホセ: セザール・エリアス
ヘルナン: ヘルナン・ベジャール
リナ: エレナ・ロホ
ドン・フランシスコ: オルランド・サッシャ
ホアン: ミゲル・アンジェル・フロレス
先生: ガブリエル・フィガロア

この映画は、単なる過去の再現ではなく、記憶や幻影が現在に影響を及ぼす様を、独創的な手法で描き出した作品として知られている。特に、ホセが見る幻影が物語を駆動させる原動力となり、観客もまた彼の視点を通して過去の悲劇を追体験するかのような感覚を味わうことになる。

ペルー映画史における重要な作品の一つとして位置づけられており、アルマンド・ロブレス・ゴドイの作家性を強く感じさせる傑作である。

外部リンク

砂のミラージュ - allcinema
* Espejismo - IMDb (英語)

もう一度検索