砂の妖精

砂の妖精：願いを叶える妖精と5人の子どもの冒険物語

イーディス・ネズビットによる1902年の児童小説『砂の妖精』（原題：Five Children and It）は、世界中で愛され続ける不朽の名作です。本作品は、1900年に雑誌『ストランド・マガジン』に連載された物語を書籍としてまとめたもので、その後『火の鳥と魔法のじゅうたん』『魔よけ物語』と続くシリーズの第一作目にあたります。

物語は、ロンドンからケント州へ引っ越してきた5人の兄弟姉妹―ロバート、アンシア、シリル、ジェイン、そして末っ子のヒラリー―の日常から始まります。彼らは、砂利場で奇妙な生き物を見つけます。それが、願いを叶える力を持つ妖精、サミアドでした。サミアドは、ずんぐりした体に長い耳と、カタツムリのような目を持つ、風変わりな姿をしています。

サミアドは、子どもたちに1日に1つの願いしか叶えられないこと、そして願いは日没とともに消えてしまう（あるいは石に変わってしまう）というルールを課します。このルールは、古代から受け継がれてきたものだと説明されます。しかし、子どもたちはサミアドの忠告を無視したり、うまく解釈できなかったり、空想的な願いをしてしまうため、予期せぬ出来事が次々と起こります。

例えば、「美しくなりたい」と願った結果、使用人たちに気づかれず家に帰れなくなったり、「お金持ちになりたい」と願った結果、流通していない金貨が大量に現れ、何も買えなくなったりします。「翼が欲しい」と願った際には、見事に翼が生えますが、日没時に教会の鐘楼に閉じ込められてしまうなど、彼らの願いは常に皮肉な形で叶えられます。

また、ロバートがパン屋の小僧にからかわれた腹いせに「もっと大きくなりたい」と願った際には、身長約3.3メートルもの巨人になってしまい、見世物小屋で働く羽目になります。さらに、「家が城だったらいいのに」と願ったことから、城に住むことになりますが、敵に包囲されたり、アメリカ先住民に出会ったりと、新たな冒険に巻き込まれます。末っ子のヒラリーも、「自分だけを可愛がってくれる人が欲しい」と願ったことで、誘拐犯から逃げるはめになったりと、彼らの願いは様々な問題を引き起こします。

物語のクライマックスでは、子どもたちが母親に宝石を贈ろうとしたことから、大量の宝石が家の中に現れます。この事態を解決するために、サミアドに助けを求め、最後の願いを使うことになります。そして、アンシアだけがサミアドに再び会えることを願うことで、物語は幕を閉じます。しかし、その最後の台詞「彼らはまた『それ』に会いました。でも、それはこの物語の中ではありません。砂利場でもなく、とても、とても違った場所で。それは…ああ、でも、それはまた別のお話です」と、この冒険の続きをほのめかす言葉で終わります。

『砂の妖精』は、単なるファンタジー小説ではなく、子どもたちの成長や友情、家族の絆、そして大人の世界の複雑さを描いた、奥深い物語です。サミアドの不器用な願いの叶え方や、子どもたちの失敗とそこから学ぶ経験を通して、読者は人生の教訓を学ぶことができます。また、この物語は、『火の鳥と魔法のじゅうたん』『魔よけ物語』という続編があり、サミアドと5人の子どもたちの冒険は続いていきます。アニメや映画、漫画など、様々なメディアで展開されているのも、この作品の人気の証でしょう。日本語訳も多く出版されているため、ぜひ手に取ってみてください。

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