破産宣告

旧破産法における破産宣告手続き

本稿では、既に廃止された旧破産法（大正11年4月25日法律第71号）に基づく破産宣告手続きについて解説します。現行の破産法（平成16年6月2日法律第75号）では「破産手続開始の決定」と表現されている点にご注意ください。

破産宣告と同時廃止

破産原因が認められると、裁判所は破産宣告を行います。この際、裁判所は破産管財人を選任し、債権届出期間、第1回債権者集会の日時、債権調査の日時を決定します（破産法142条1項、157条）。さらに、破産決定の内容、破産管財人の情報、債権届出期間などを公告し、関係者へ通知する必要があります（同法143条1項、2項、118条1項）。公告と送達に関する詳細は、破産法111条、115条1項、117条、118条2項を参照してください。

ただし、破産財団で破産手続き費用を賄えないと裁判所が判断した場合は、破産宣告と同時に破産廃止（手続を途中で終了させる決定）を行います（同法145条1項）。これを「同時破産廃止」または「同時廃止」といい、この場合、破産管財人の選任や債権届出期間の設定は行われません。

破産財団

破産宣告時に破産者が所有する全ての財産は、破産財団となります（同法6条1項）。破産財団の詳細については、別途参照ください。

破産者の権利喪失

破産財団の管理処分権は破産管財人に移行し（同法7条）、破産者はその権利を失います。破産宣告後に破産者が破産財団の財産に関して行った行為は、破産債権者に対抗できません（同法53条1項）。また、破産宣告後に破産者以外の者が破産財産を取得した場合も、同様に破産債権者に対抗できません（同法54条1項）。

不動産や船舶の登記、権利の移転、企業担保権の設定なども同様です（同法55条）。ただし、登記権利者が破産宣告を知らなかった場合は、破産債権者に対抗できます（同条但書）。破産宣告後に破産者から弁済を受けた場合も、その事実を知っていたか否かで、破産債権者への対抗要件が異なります（同法56条）。破産宣告の公告前であれば、破産者や相手方はその事実を知らなかったと推定され、公告後であれば知っていたと推定されます（同法58条）。

破産財団の運営

裁判所が選任する破産管財人は、裁判所の監督下に置かれ（同法161条）、裁判所の判断や債権者集会の決議、監査委員の申立てなどにより解任される可能性があります（同法167条）。破産財団に関する訴訟は、破産管財人を原告または被告として行われます（同法162条）。破産管財人の任務終了後には、計算報告が債権者集会になされます（同法168条）。

監査委員の設置は第1回債権者集会で決定され（同法170条）、3名以上が選任され、裁判所の認可が必要です（同法172条）。監査委員は債権者集会の決議で解任されるほか、重要な事由があれば裁判所が解任する可能性もあります（同法174条）。監査委員は破産管財人へ報告を求めたり、財団状況を調査する権限を持っています（同法173条）。

債権者集会は裁判所が招集・指揮し（同法176条前段、178条）、破産債権者は確定債権額に応じて議決権を行使します（同法182条）。債権者集会の決議には、出席破産債権者の過半数の同意（債権額が総債権額の半額以上）が必要です（同法179条1項）。債権者集会の決議は監査委員の同意に代えることができ、異なった場合は決議に従います（同法183条）。

契約関係の処理

双務契約において、破産宣告時点で両当事者が履行を完了していない場合、破産管財人は契約解除または債務履行を選択できます（同法59条1項）。契約解除の場合は、相手方は損害賠償を請求できます（同法60条1項）。賃貸借契約では、破産宣告時の当期と次期に関する借賃以外の前払いや債権処分は、破産債権者に対抗できません（同法63条1項）。

訴訟の受継等

破産財団に関する係属訴訟は、破産管財人または相手方が受継ぎます（同法69条1項前段）。破産財団に対する強制執行などは原則効力を失いますが、破産管財人は破産財団のために手続きを続行できます（同法70条1項）。国税徴収などは破産宣告を妨げません（同条1項）。行政庁に係属する事件は、受継ぎまたは破産手続の解止まで中断します（同条2項）。詐害行為取消訴訟も同様です（同法86条1項）。

破産者への制限

破産者は裁判所の許可なく居住地を離れられません（同法147条）。裁判所は必要に応じて破産者の引致や監守を命じることができ（同法148条1項、149条1項）、これらの制限は破産者の代理人などにも適用されます（同法152条）。破産者などは、破産管財人や債権者集会の請求により、破産に関する説明を行う義務があります（同法153条1項）。

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