硫酸亜鉛

硫酸亜鉛：性質、製造、用途、そして歴史

硫酸亜鉛は、硫酸と亜鉛から構成される無機化合物であり、化学式はZnSO₄で表されます。別名、皓礬（こうばん）とも呼ばれ、様々な産業において重要な役割を担っています。

物理的性質と化学的性質

硫酸亜鉛は水に溶けやすい白色の結晶性粉末です。特徴的なのは、結晶化の際に温度によって異なる水和物が生成することです。一般的に、7水和物、6水和物、1水和物が得られます。7水和物では、6つの水分子が亜鉛イオンに、1つの水分子が硫酸イオンに配位した構造をとっています。

加熱すると、約250℃で結晶水を失い無水物になります。さらに高温になると、600℃でZn₃O(SO₄)₂となり、930℃で酸化[亜鉛]に分解します。無水物の密度は3.74g/cm³です。

製造方法

硫酸亜鉛の製造方法は主に、炭酸亜鉛または酸化亜鉛を硫酸に溶解する方法です。亜鉛金属を直接硫酸に溶解する方法もありますが、この方法では水素が発生し、硫酸が還元されて不純物が混入するため、一般的には用いられません。

得られた硫酸亜鉛溶液を再結晶することで、高純度の結晶を得ることができます。結晶化温度によって、7水和物、6水和物、1水和物が選択的に得られます。具体的には、0～39℃で7水和物、39～60℃で6水和物、60～100℃で1水和物が得られます。その他にも、不安定な単斜晶系の7水和物、4水和物、2水和物などが知られています。

用途

硫酸亜鉛は、その多様な性質から、様々な分野で利用されています。

工業用途: 顔料、媒染剤、木材防腐剤、亜鉛めっき液などとして広く利用されています。これらの用途では、硫酸亜鉛の金属イオンとしての性質や、水溶性、結晶化特性などが活かされています。
農業用途: 一時期、農業用殺菌剤として使用されていましたが、2010年に登録が失効しています。
* 医薬品用途: 希薄溶液は、収斂剤や点眼薬として使用されます。その収斂作用は、タンパク質の凝固作用によるものと考えられています。

歴史と安全性

硫酸亜鉛は古くから知られており、様々な文献にその記述が見られます。近年では、その安全性についても詳細な研究が行われています。適切な取り扱いと使用により、安全に利用できる物質です。ただし、高濃度の溶液は皮膚や粘膜を刺激するため、取り扱いには注意が必要です。

まとめ

硫酸亜鉛は、その多様な性質と幅広い用途を持つ重要な化合物です。本稿では、その物理的性質、化学的性質、製造方法、用途、歴史について解説しました。今後も、様々な分野での硫酸亜鉛の利用が期待されます。

もう一度検索