磁気バブル

磁気バブルとは

磁気バブルとは、特定の結晶方位で切り出された磁性体単結晶薄膜に存在する、膜面に対して垂直な円柱状の磁区のことを指します。この現象は1960年代にベル研究所のアンドリュー・ボーベックらによって研究が進められました。

磁気バブルの形成

薄膜の磁化は、外部磁界がない状態では上向き磁区と下向き磁区が入り混じったストライプ状の磁区を形成しています。この状態から垂直上向きの外部磁界を加えると、上向き磁区が成長し、下向き磁区は縮小します。さらに磁界を強めると、下向き磁区は連続性が失われ、最終的には円柱状の磁区となります。この状態を磁気バブルと呼びます。磁界をさらに強めると磁気バブルは小さくなりますが、ある磁界以上になると突然消滅します。この様子が泡が潰れるように見えるため、磁気バブルという名前がつけられました。

磁気バブルメモリ

磁気バブルメモリは、上記の磁気バブルの現象を応用した記憶装置です。磁気バブルの有無を「1」と「0」に対応させ、磁界を制御することでデータの書き込みと読み出しを行います。不揮発性であり、可動部分がないため、振動や塵埃に強いという利点があります。しかし、外部磁界の影響を受けやすく、データが損傷しやすいという欠点も抱えていました。

磁気バブルメモリの利用

磁気バブルメモリは、比較的安価に製造でき、高速アクセスが可能だったため、1970年代から電話交換機のファイル記憶装置や銀行端末などに広く利用されました。また、初期のパソコンでは、ROMカセット状のリムーバブルメディアとしても利用されました。例えば、1981年に発売されたBUBCOM80には補助記憶装置として標準搭載され、富士通のFM-8やFM-11でも内蔵または外付けオプションとして利用可能でした。シャープのPC-5000もカートリッジスロットを持っていました。

1980年代中盤には、コナミの業務用ゲーム機「バブルシステム」にも応用されました。また、FA分野でも利用されました。

磁気バブルメモリの終焉

登場当初は、半導体メモリよりも大容量で安価に製造できたため一定の需要がありましたが、EPROMやフラッシュメモリなどの不揮発性半導体メモリの大容量化やハードディスクの小型化が進むにつれて、その需要は終息しました。

磁気バブルメモリの利点と欠点

利点

不揮発性: 電源を切ってもデータが失われない。
高速アクセス: 比較的速いデータアクセスが可能。
耐環境性: 可動部分がなく、振動や塵埃に強い。

欠点

磁気の影響: 外部磁界の影響を受けやすく、データ損傷の可能性がある。
製造コスト: 半導体メモリと比較して製造コストが高い。
大容量化の限界: 半導体メモリと比較して、大容量化が難しい。

まとめ

磁気バブルメモリは、かつては重要な記憶装置でしたが、技術の進歩によりその役割を終えました。しかし、その技術は、現在の情報技術の発展に貢献した重要な歴史の一部であると言えるでしょう。

関連項目

磁気コアメモリ
磁気抵抗メモリ
グラディウス - アーケード版の筐体基板が、磁気バブルメモリを使用したバブルシステム。
FM-8 - 磁気バブルメモリを使用したバブルメモリユニット/カセットがオプション機器として用意されていた。
PC-5000 - 1983年、海外で発売。後に日本語ワープロソフトを用意して日本で発売。このソフトウェアがカートリッジで供給された。
ユニバーサル・メモリ

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