磯野小右衛門

磯野小右衛門：大阪経済の礎を築いた豪商

磯野小右衛門（いその こえもん）は、文政8年（1825年）に長門国阿武郡（現在の山口県萩市）に生まれ、幕末から明治にかけて大阪を中心に活躍した実業家です。米相場師として名を馳せ、堂島米会所の創設や大阪商法会議所の会頭を務めるなど、大阪経済の発展に大きく貢献しました。

米相場師としての成功と転換

18歳で下関に出て米相場を学んだ後、嘉永4年（1851年）に大阪へ進出。23歳で堂島に米穀商を開店し、米相場での才覚を発揮します。26歳の時には巨利を得て長者番付に名を連ねるほどでしたが、明治3年（1870年）の米価暴騰を機に、その活動は大きな転換を迎えます。

政府の政策が原因で米価が暴騰し、市中が困窮する中、磯野は手持ちの在庫を放出して大阪の庶民を救済しました。この経験から、米価の混乱は基準となる価格が存在しないことが原因であると悟り、先物取引の制度化と公正な取引市場の設立を目指し、堂島米会所の創設に尽力します。

堂島米会所の創設と大阪経済への貢献

明治4年（1871年）、磯野は堂島米会所（後の堂島米商会所、現在の大阪堂島商品取引所）を創設し、初代頭取に就任。先物取引を制度化することで米価の安定を図り、庶民が安心して米を食べられるように尽力しました。また、大阪商法会議所（現在の大阪商工会議所）の設立にも五代友厚らとともに発起人として参画し、第4代会頭も務めるなど、大阪経済の発展に大きく貢献しました。

その他、大阪株式取引所の頭取や北浜銀行の創設にも携わるなど、幅広い分野で活躍。豪放磊落で機略に富み、人情味あふれる人物として知られ、その行動は多くの人々に感銘を与えました。

後世への影響

磯野の事業精神は、子孫にも受け継がれています。長男の磯野良吉は、住友大阪セメントの前身である大阪窯業セメント株式会社を設立し、関西経済圏の発展に貢献。孫の世代からは、野球界で活躍した人物も輩出しています。

磯野小右衛門の墓所は大阪市北霊園にあり、現在でも多くの市場関係者がその胆力と才にあやかるべく訪れています。その功績は、大阪経済の礎を築いた人物として、今もなお語り継がれています。

エピソード

家人の着物も売って借金をし、相場を続けたという逸話が残る。
井上馨の娘であった聞(ぶん)を養女にした。
司馬遼太郎の小説「俄」にも登場する。

栄典

1890年（明治23年）1月21日 - 従六位勲五等 銀製黄綬褒章

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