社会的インパクト評価

社会的インパクト評価（しゃかいてきインパクトひょうか）

社会的インパクト評価とは、特定の事業や活動が社会や環境にもたらす変化や成果を、体系的に把握し、その価値や有効性を判断するプロセスを指します。単に活動の量（アウトプット）を測るのではなく、その活動によってどのような社会的、あるいは環境的な変化（アウトカム）が生じたのか、短期的なものから長期にわたるものまで含めて深く掘り下げることが特徴です。

日本政府の内閣府が示した考え方によれば、「社会的インパクト」とは、「短期、長期の変化を含め、当該事業や活動の結果として生じた社会的、環境的なアウトカム」と定義されています。そして、社会的インパクト評価とは、「社会的インパクトを定量的・定性的に把握し、当該事業や活動について価値判断を加えること」とされています。

目的と重要性

社会的インパクト評価を行う主な目的は多岐にわたります。第一に、社会課題の解決を目指す事業やプログラムが、実際にどの程度効果を上げているのかを検証することです。これにより、活動の改善点を見つけ出し、より大きなインパクトを生み出すための戦略を練ることが可能になります。

次に、限られた資金や人材といった資源を、最も効果的に活用するために役立ちます。評価を通じて、成果が高い活動に優先的に資源を配分したり、非効率な活動を見直したりすることで、社会全体の資源利用の効率を高めることができます。

また、事業の成果を具体的なデータやストーリーとして示すことは、資金提供者（投資家、寄付者、政府など）や協力者、そしてサービスや支援の受益者といった多様なステークホルダーに対して、活動の透明性を高め、信頼を得る上で非常に重要です。特に、社会的インパクト投資のように、財務的リターンだけでなく社会的・環境的インパクトの創出も目的とする投資においては、インパクト評価が投資判断や投資後のモニタリングにおいて中心的な役割を果たします。

評価の手法

社会的インパクト評価は、定量的手法と定性的手法を組み合わせて行われるのが一般的です。定量的手法では、アンケート調査や統計データ分析などを通じて、数値化可能な成果を測定します。例えば、「支援を受けた人々の就職率が〇〇％向上した」「再生可能エネルギーの導入によりCO2排出量が〇〇トン削減された」といった具体的な数値を把握します。

一方、定性的手法では、インタビューやフォーカスグループ、事例研究などを通じて、数値では捉えきれない、人々の経験や活動による質的な変化、長期的な影響などを深く理解しようとします。例えば、「プログラムへの参加が人々のwell-being（幸福度）にどう影響したか」「地域社会の結びつきがどのように変化したか」といった、数値では表現しにくい側面を探ります。

両手法を組み合わせることで、多角的かつ包括的に社会的インパクトを捉えることが可能となり、より説得力のある評価を行うことができます。

日本における動向

近年、日本においても社会的インパクト評価への関心は急速に高まっています。社会課題の複雑化や、持続可能な社会の実現に向けた意識の高まりを背景に、NPOや企業、政府、自治体など、様々な主体が評価の導入を検討・実施しています。

こうした動きを推進する一環として、2016年6月には、日本における社会的インパクト評価の普及と発展を目指す民間主導のプラットフォーム「社会的インパクト評価イニシアチブ」が設立されました。これは、評価手法に関する情報交換や研修、政策提言などを通じて、評価実践の質の向上と社会への浸透を図る重要な役割を担っています。

展望

社会的インパクト評価は、社会全体の資源が、より良い社会づくりに向けて最大限に活用されるための重要なツールとして、今後ますますその活用が進むと期待されています。評価の実践とノウハウの蓄積が進むにつれて、社会課題解決に向けた取り組みの質は向上し、持続可能な社会の実現に向けた動きが加速することが見込まれます。

（関連項目：社会的インパクト投資、企業の社会的責任）

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