社葬 (映画)

映画『社葬』についての詳細

概要

『社葬』（しゃそう）は、1989年に公開された日本の映画で、制作は東映京都撮影所、配給も東映が手掛けています。この作品では、大新聞社における後継者争いと、権力闘争を描いたシニカルなブラックコメディとして、多くの注目を集めました。会社版『仁義なき戦い』とも評されるこの映画は、特に興味深い題材とリアルなキャラクター描写で、観客の心を掴みました。また、1991年には、本作を原作としたテレビドラマ版も放送されています。

ストーリー

物語は、全国紙「太陽新聞」を発行する太陽新聞社を舞台に、会長太田垣と社長岡部の派閥間の権力争いが繰り広げられる様子から始まります。岡部派が太田垣の解任を目論むが、唯一の中立役員鷲尾が棄権することで動議は可決。太田垣はショックを受け、心臓の病気で意識不明に陥ります。ここから次第に、複雑な人間関係と権力闘争が明らかになり、岡部が不倫相手と遊んでいた夜に急死するという波乱の展開が巻き起こります。

役員たちは、岡部の不倫スキャンダルを隠すために手を尽くし、社葬の準備を岡部のためのものに変更します。この波乱の中、太田垣派は入院中の太田垣を名ばかりの「葬儀委員長」に任命し、社葬を通じて復権を狙います。物語は、後任社長選びの騒動や、新聞社内での不正疑惑、社員の反乱など、緊張感溢れる出来事を経て進行します。

最終的には、社葬の場で太田垣とその後任社長が選出され、社内の「腐敗」に対する戦いが宣言されることで、抗争の終結を迎えます。しかし、鷲尾は私生活の混乱に苦しむ羽目になり、作品は悲喜劇として締めくくられます。

キャスト

主なキャストには、鷲尾役の緒形拳、料亭の女将役の十朱幸代、岡部の息子役の佐藤浩市などがあり、実力派の俳優たちが集結しています。彼らの演技は、物語の深みを一層引き立てました。

製作背景

本作は、1980年代の東映が打ち出した「アダルト路線」に則って製作されました。「アダルト」という言葉が意味する通り、成熟した大人向けの内容を意識しており、読者を惹きつける企画が求められていました。株式会社東映が社長の岡田茂による主導で、社葬をテーマとした企画が成立し、その後松田寛夫が脚本を手掛けました。

評価

公開後、本作は多くの映画賞を受賞し、特に松田寛夫はその脚本に対して高い評価を得ました。興行的にも大都市でのヒットを見せ、観客層を中心とした調査でも成功が認められました。映画は、二次使用により収益化されることで、結果的には商業的にも成成功を収めることとなりました。

テレビドラマ版

1991年には、テレビドラマ版「社葬 女たちの野望」が放送され、映画とは異なる視点から同様のテーマを掘り下げました。これにより、より広範な視聴者へのアプローチが試みられました。

総括

『社葬』は、ただのビジネスの内部を描く作品に終わらず、人間ドラマとしても輝きを放つ作品です。権力争いや人間関係の機微を通じて、観客に深い示唆を与えています。この映画は、単にエンターテインメントとしての側面を持つだけでなく、日本の社会と文化に対する鋭い批評を提供していることが特筆に値します。

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