神々の乱心

神々の乱心

『神々の乱心』は、松本清張が生涯で最後に執筆した長編推理小説であり、彼の遺作とも言える重要な作品です。この作品は1990年3月29日から1992年5月まで『週刊文春』に連載され、清張が亡くなった後の1997年1月に文藝春秋から出版されました。物語の舞台は大正末期から昭和初期にかけて、当時の日本の政治や社会の動乱を背景に、新興宗教団体の陰謀を描いています。

あらすじ

物語は昭和8年に埼玉県比企郡のある町が舞台です。「月辰会研究所」という降霊術の研究団体が存在し、この団体に特高警察の吉屋警部が着目します。彼は研究所から出た北村幸子という女性に尋ねるものの、彼女が宮中に奉仕する女官の使いであることを知ります。幸子が持つ封書に描かれた奇異な紋章が気になった矢先、彼女は奈良県の吉野川で投身自殺を遂げてしまいます。吉屋は自分の尋問が原因であったと悔い、葬儀に出席するため吉野町に向かいます。

葬式の場で、幸子の弟・友一が萩園泰之という男に事件への関与を求めます。萩園は宮中に関わる深町女官の弟であり、友一と共に事件を追い求めることとなります。

月辰会の起源は大正15年にさかのぼります。秋元伍一という元関東軍の情報将校が満州で霊媒師の江森静子と出会い、彼女の霊能力を利用して月辰会を設立します。事態は次第に悪化し、教団の勢力が拡大する中で静子は暴走を始め、その結果として計画されていた陰謀が露見します。

結末の構想

本作は未完で終わりましたが、清張は生前に結末についての構想を編集者に語っていました。総じて、平田は静子の暴走に対処するため、美代子へ教団の指導権を移行させようとしますが、激怒した静子からの呪いを受け、雷に打たれて命を落とすというものでした。

登場人物

• - 吉屋謙介: 埼玉県特高警察の警部で、月辰会に関わる事件を捜査します。
• - 萩園泰之: 深町女官の弟で、吉屋と共に捜査に加わります。
• - 北村幸子: 月辰会に関与し、自殺を遂げた女性。
• - 江森静子: 降霊術の霊媒師で、月辰会の立ち上げに関わります。

この作品は、松本清張の作家精神と、当時の日本の政治的背景を結びつけた歴史ミステリーです。推理小説の深みや人間関係の複雑さが見事に描かれ、未完ながらも多くの謎を私たちに投げかけます。彼の作品は、その後の日本文学に深い影響を与え続けています。

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