神さまの話

『神さまの話』（Geschichten vom lieben Gott）は、ライナー・マリア・リルケによって書かれた物語集であり、神にまつわる13の物語が収められています。この作品は、1900年に『神さまとその他のことについて』（Vom lieben Gott und Anderes）というタイトルでクリスマスに合わせて刊行されました。その後、1902年に改題され、現在の『神さまの話』となりました。この改題の際、冒頭にはエレン・ケイへの献辞が加えられています。

これらの物語は、いずれも童話のようなスタイルで書かれており、作者自身を思わせる語り手が、子供たちに語り聞かせるように、しかし実際には大人に向けて語りかけるという形式が取られています。ここで描かれる「神さま」は、必ずしも聖書などの典拠に依拠しているわけではなく、リルケ自身の自由な発想と解釈に基づいて綴られています。

リルケは1899年から1900年にかけてロシアを旅行し、この地で出会った素朴な信仰生活に深い感銘を受けました。このロシア旅行での経験は、本作に大きな影響を与えており、実際にロシアを舞台にした物語も含まれています。作品全体を通して、リルケの信仰に対する考察や、人間の内面にある精神世界への探求が感じられます。

『神さまの話』は、さまざまな翻訳で日本語に親しまれてきました。主な翻訳としては、以下のようなものがあります。

神さまの話（谷友幸訳、新潮文庫、1953年、改版2007年ほか）
神さまの話（菊池栄一訳、角川文庫、1955年）
神さまの話（手塚富雄訳、「世界の文学 リルケ」中央公論社、1964年）
神さまの話（金子正昭訳、「リルケ全集 6巻」河出書房新社、1990年）

これらの翻訳を通して、リルケの独特な世界観と、神に対する深い洞察に触れることができるでしょう。リルケの作品に興味を持つ読者にとって、『神さまの話』は彼の精神世界への入り口となるかもしれません。

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