神の十戒復古運動

神の十戒復古運動

神の十戒復古運動（Movement for the Restoration of the Ten Commandments of God）は、1980年代末期にウガンダで誕生したキリスト教系の新宗教団体です。この運動は、クレドニア・ムウェリンデ、ジョセフ・キブウェテーレ、ビー・テートらによって設立され、ローマ・カトリック教会から分派したものとして知られています。特にこの団体は、終末に関する教義を強調し、信者たちに対し厳格な戒律を守るよう求めました。

背景と成立

教団の起源は、ムウェリンデの父親であるパウロ・カシャクの霊的体験に遡ります。彼は1960年に亡くなった娘の霊的ビジョンを見たと語り、その後、この教団の信者たちは聖母マリアからの黙示に基づいて行動しました。1989年にムウェリンデとキブウェテーレが出会い、神の十戒復古運動が創設されました。

運動は急速に成長し、元カトリックの聖職者や修道女たちが指導者として参加しました。彼らは教義を支持し、信者たちを導く役割を果たしました。しかし、教団の暮らしや生活スタイルは非常に厳しく、食事制限やコミュニケーションの制約が強く課されました。信者たちは基本的に手話でやり取りし、外部との接触を制限されていました。

教義と終末予言

教団の教義の中心にはモーセの十戒があり、これに対する服従を信者たちに求めました。特に終末についての教えが強調され、1999年12月31日を終末の日と予言しました。しかし、その日は何事も起こらず、教団内に不穏な空気が漂い始めました。指導者たちは新たに2000年3月17日を終末の日と再予言し、信者たちに最後の準備を促しました。

悲劇の始まり

2000年3月17日、教団は大規模な集会を開催しました。しかし、その集会は火災に見舞われ、参加者530人が死亡するという惨劇が発生しました。火災は計画的に起こされたと考えられ、教団の指導者たちの中には、参加者の逃げられない様に建物が封鎖されていたとの証言もあります。この火災が引き金となり、事件の調査が進むと、教団の指導者たちによる大量殺人の可能性が浮上しました。

教団の崩壊と影響

火災の後、遺体の発見が相次ぎ、遺体は毒殺や暴力があったことが確認されました。最終的に犠牲者数は924人とされ、教団の信者たちは絶望的な結果を迎えました。政府は教団を調査し、大統領はこの事件を「金銭に目の眩んだ教団の司祭達による大量殺人」と非難しました。

教団が解体された後も、遺族や信者たちの悲しみは続きました。火災があった地は放置され、ジャングルに飲み込まれつつあります。現代ウガンダにおけるこの事件は、カルトや新宗教の急増と社会的混乱がいかに関連しているかを示す一例でもあります。

結論

神の十戒復古運動は、信者たちを巻き込んだ悲劇的な事件を通じて、宗教の力や教義が持つ影響力についての深刻な警鐘を鳴らしています。終末を予言し、信者たちを精神的に束縛した指導者たちの行動は、多くの人々の命を奪う結果となりました。教団の事例は、信仰の名の下に展開される危険な側面を浮き彫りにしています。

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