神宝

神宝（じんぽう、かむだから）とは、神社における祭祀で用いられる特別な宝物のことを指します。具体的には、神社の本殿内陣に納められ、祭神に由緒の深い宝物、調度品、装束などが含まれます。

広義には、神社に代々伝わる宝物全般を指すこともありますが、これらは通常「社宝（しゃほう）」と呼ばれ、神宝とは区別されます。神宝は、祭神そのものや、祭祀において重要な役割を果たすものとして、より神聖な存在とみなされます。

神宝の起源は、古代の呪具に遡ります。剣、玉、鏡といった品々は、古代の氏族が権威を象徴し、祭祀で用いたものでした。これらの品々は、神の力を宿すものとして、特別な扱いを受けてきました。例えば、『先代旧事本紀』に登場する十種神宝は、その代表的な例です。これらは、単なる装飾品ではなく、祭祀における重要な道具であり、神の力を引き出すためのものでした。

時代の変遷とともに、神の擬人化が進み、神像が作られるようになると、神宝の内容も変化していきました。人間が日常的に使用する品々、例えば手箱、碗、化粧用具、衣服などが神宝に含まれるようになったのです。これは、神への奉仕の形が、より具体的かつ日常的なものへと変化したことを示しています。

特に、式年遷宮などの社殿更新の際には、神宝も新調されます。この際、それまで使用されていた神宝は「古神宝」と呼ばれ、その一部は社宝として神社に残されます。社宝となった古神宝は、神社の歴史と伝統を物語る貴重な文化財として、大切に保管・展示されます。

伊勢神宮では、20年ごとに式年遷宮が行われ、社殿とともに714種1576点に及ぶ御装束神宝（装束や須賀利御太刀などの神宝）も新しく造り替えられます。新しく作られた神宝は、20年間正殿に捧げられた後、宝殿でさらに20年間保管されます。そして、最終的には撤下され、神宮徴古館で展示されたり、他の神社に下げ渡されることになります。このように、神宝は単に保管されるだけでなく、その役割を終えた後も、神社の歴史や文化を伝える上で重要な役割を果たします。

神宝は、神社の歴史、信仰、文化を理解する上で欠かせない存在です。その起源から現代に至るまでの変遷は、日本の宗教観や社会の変化を映し出す鏡とも言えるでしょう。

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