神宮文庫

神宮文庫：神道の歴史と文化を伝える知識の宝庫

伊勢神宮が運営する神宮文庫は、日本の歴史と文化、特に神道に関する貴重な資料を収蔵する図書館です。神宮の公益事業として、一般への公開も行っており、多くの人々が歴史資料に触れる機会を提供しています。

設立と歴史：幾多の変遷を経て現代へ

神宮文庫の歴史は古く、奈良時代には内宮に文書を保管する施設が設けられました。その後、鎌倉時代には外宮にも同様の施設が作られましたが、南北朝時代の戦乱によって資料の散逸が危惧されました。江戸時代には、国学者らによって外宮近くに豊宮崎文庫、内宮近くに林崎文庫という私設の文庫が設立され、多くの書物が集められ、学問の拠点としての役割も果たしました。

明治時代に入ると、明治政府による神宮の近代化政策に伴い、内宮と外宮、そして豊宮崎文庫と林崎文庫が統合され、神宮司庁が所蔵する図書などを保管する施設として、1906年（明治39年）に神宮文庫が設立されました。

当初は神宮司庁が管理していましたが、後に神宮皇學館に移管され、現在も皇學館大学と密接な関係を保っています。戦後の蔵書増加に対応するため、幾度かの増改築が行われ、現在では約30万冊の蔵書を誇る大規模な図書館となっています。

貴重な蔵書：日本の歴史と文化を映す鏡

神宮文庫の蔵書は、神道に関する歴史書や文学書を中心に、江戸時代以前の和装本が約28万冊を占めます。これらの中には、国宝や重要文化財に指定された貴重な資料も含まれており、日本の歴史と文化を深く理解するための重要な資料となっています。

特に注目すべきは、鎌倉時代の『皇太神宮儀式帳』や『等由気太神宮儀式帳』、室町時代の『古事記裏書』、江戸時代の『神宮法楽和歌』などです。これらは、神道の儀式や信仰、天皇の和歌など、多様な側面から日本の歴史を伝える貴重な史料です。

また、江戸時代前期の天文暦学者、渋川春海の天文観測資料なども収蔵されており、科学史の研究にも役立つ資料となっています。

一般公開と利用：歴史に触れる機会を皆様に

神宮文庫では、木曜日から土曜日にかけて一般公開を行っています。蔵書は閉架式で、利用者は総目録などを用いて検索し、希望する資料を係員に申し込むことで閲覧できます。閲覧制限のある資料もありますが、多くの貴重な資料を閲覧することができます。

閲覧室には、文化財指定を受けた資料のレプリカを展示するコーナーも設置されており、より多くの人が歴史資料に親しむことができます。

関連施設：伊勢神宮の文化を支える施設群

神宮文庫は、伊勢神宮が運営する他の文化施設とも連携しています。神宮徴古館は、神宮文庫と隣接しており、神宮に関する考古資料や美術工芸品などを展示しています。また、皇學館大学は神宮文庫と密接な関係を持ち、神道研究の拠点としての役割を担っています。

これらの施設は、伊勢神宮という聖地と深く結びつき、日本の歴史と文化、特に神道に関する貴重な資料を保存・研究・公開することで、日本の文化遺産の継承と発展に貢献しています。

豊宮崎文庫と林崎文庫のその後

江戸時代に設立された豊宮崎文庫と林崎文庫は、明治時代に神宮文庫へと統合されましたが、これらの旧址はそれぞれ国の史跡に指定されています。現在も、旧豊宮崎文庫跡は伊勢市立郷土資料館として、旧林崎文庫跡は伊勢神宮が管理しており、一般公開されています。これらの旧址を訪れることで、神宮文庫の歴史と、日本の歴史・文化の深淵に触れることができます。

神宮文庫は、単なる図書館という枠を超え、日本の歴史と文化を理解するための貴重な拠点となっています。その歴史と役割を理解することで、日本の文化遺産の豊かさ、そしてその未来への可能性を改めて認識することができます。

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