神戸市交通局750形電車

神戸市交通局750形電車：ロマンスカーの栄光と変遷

神戸市交通局750形電車は、戦後の復興期に製造された神戸市電の路面電車です。戦前の人気車両700形、通称「ロマンスカー」の後継として、1949年から1953年にかけて10両（751 - 760号）が製造されました。

製造の背景

750形は、戦災から復興した神戸市交通局長田車両工場で製造されました。戦前の様な設備が整わない中、何とか車両製造が可能な環境を整え、製造された車両です。車体は、先行して登場していた900形をベースに、中扉部分を短縮した設計で、700形よりも若干短くなりました。電装機器類は新たに製造されたものが採用されています。

ロマンスカーとしての登場

最初に751・752号の2両が1949年に登場し、1951年には753 - 755号の3両が増備されました。初期の車両は集電装置にトロリーポールを使用していましたが、753 - 755号はビューゲルに変更されました。

1953年には、市民からの要望に応える形で、756 - 760号が増備されました。これらの車両は「ロマンスカー」として製造され、室内には転換クロスシートが設置されました。出入口付近には1人掛け、中央部には2人掛けの座席が配置され、窓上には蛍光灯が並ぶなど、従来の車両とは一線を画す豪華な内装が特徴でした。ロマンスカーは市民から大変歓迎されました。

短命に終わったロマンスカー時代

しかし、クロスシートはラッシュ時の乗客収容力に難があり、750形は昼間時でもあまり使用されなくなりました。そこで、神戸市交通局は1963年にクロスシートをロングシートに改造し、ロマンスカーとしての750形はわずか10年で姿を消しました。同時に、窓枠下段のアルミサッシ化も行われました。

その後

改造後は、10両全てが揃って使用されました。760号は事故に遭い、側面窓が全てアルミサッシ化されています。

750形は、1970年3月の山手・上沢・須磨の各線廃止の際には廃車を免れましたが、同年8月1日付で全車廃車となりました。

保存車両

760号は解体を免れて局工場で保管されましたが、片側の運転台部を除いて解体されました。現在、神戸市営地下鉄名谷車両基地に保管されており、車庫の一般公開日に700形705号や800形808号と共に公開展示されています。また、705号の車内に設置されているクロスシートは、750形からの流用品です。

750形は、短い期間ながらロマンスカーとして市民に愛され、神戸市電の歴史を彩った車両です。その一部は現在も保存されており、当時の面影を偲ぶことができます。

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