神戸市電税関線

神戸市電税関線：短い歴史と美しい継承

神戸市電税関線は、神戸市の中心部を僅かばかりを結んでいた、短いながらも歴史を持つ路面電車路線でした。その存在は、神戸の街の発展と深く関わっており、人々の生活に密着した交通手段として、昭和の時代を彩りました。本稿では、税関線の歴史、そして現在へと続くその跡地について掘り下げていきます。

開業から廃止まで：変遷と特徴

税関線は、1933年（昭和8年）1月1日、瀧道停留場と税関前停留場を結ぶ単線として開業しました。神戸市電において、唯一単線で運行されていた路線であったという点が特筆に値します。その後、1934年（昭和9年）9月7日には複線化され、輸送力増強が図られました。1935年（昭和10年）7月2日には、瀧道停留場が瀧道分岐点へと格下げされるという変更もありました。これらの変更は、神戸市全体の都市開発や交通事情の変化を反映していると言えるでしょう。

しかし、高度経済成長期における自動車交通の増加、そして路面電車の時代遅れといった流れの中で、税関線は1966年（昭和41年）5月1日に廃止されました。これは、本格的な神戸市電の撤去計画に先駆けた措置であったと推察されます。わずか33年の歴史でしたが、多くの市民にとって身近な存在であったことには違いありません。

現代に残るシンボル：税関線シンボルロード

廃止された税関線の跡地は、「税関線シンボルロード」として整備され、現在も人々に親しまれています。緑豊かな並木道は、かつて路面電車が走っていた面影を残しつつ、美しい景観を作り出しています。その美しい景観は高く評価され、昭和62年度手づくり郷土賞（ふれあいの並木道部門）を受賞しています。この賞は、地域住民の協働による景観づくりを表彰するものであり、税関線跡地の整備がいかに地域に貢献しているかを示しています。

現在、税関線シンボルロードは、神戸市民の憩いの場として、また、街の歴史を伝える貴重な空間として活用されています。路面電車の面影を偲ばせるモニュメントや、周辺の建造物と調和したデザインは、往時の雰囲気を現代に伝えています。

資料と参考文献

本稿の作成にあたり、以下の資料・参考文献を参照しました。

『鉄道廃線跡一覧表（兵庫県内） - 神戸・兵庫の郷土史』
昭和37年7月現在の電車運転系統図
* 昭和41年3月頃の路線図

これらの資料は、税関線の歴史を正確に把握し、詳細な記述を行う上で不可欠なものでした。特に、当時の路線図や運転系統図は、税関線の運行状況や、周辺の交通網との関係性を理解する上で非常に役立ちました。

まとめ

神戸市電税関線は、短いながらも、神戸の街の発展と密接に結びついた歴史を持つ路線でした。その跡地は、現在では美しいシンボルロードとして生まれ変わり、人々の生活に潤いを与えています。税関線は、単なる交通手段としてだけでなく、街の歴史や文化を伝える重要な存在として、これからも人々の記憶に刻まれ続けることでしょう。

もう一度検索