神戸市風見鶏の館

神戸市風見鶏の館：歴史と建築美の融合

神戸市中央区北野町に佇む風見鶏の館は、1904年（明治37年）、ドイツ人貿易商ゴットフリート・トーマス氏の私邸として建てられました。国の重要文化財に指定されているこの建物は、重厚な煉瓦造りの外観と、屋根を飾る風見鶏が特徴的な、ネオ・バロック様式を基調とした異人館です。

ドイツ人建築家による洗練されたデザイン

設計を手掛けたのは、ドイツ人建築家ゲオルグ・デ・ラランデ。トーマス氏は、この建物を「ハウス・レナニア（ラインの館）」と呼んでいました。ドイツ風の重厚な外観とは対照的に、内装にはアール・ヌーヴォー様式が取り入れられ、洗練された空間が創り出されています。各階ごとに異なる意匠が用いられ、地階は御影石積、1階は煉瓦造、2階は木造ハーフティンバーと、素材や技法の巧みな組み合わせが目を引きます。玄関ポーチ、バルコニー、ベランダ、塔屋など、細部に至るまでこだわりが感じられます。

戦争と運命のいたずら

第一次世界大戦の勃発により、トーマス一家はドイツへ一時帰国したまま、帰国できなくなりました。館は敵性資産として扱われたという説もありますが、実際には戦時中に売買された経緯があります。その後、実業家・山縣勝見氏を経て、神戸中華同文学校へと所有権が移転しました。

ドラマ放映と文化財としての再評価

1977年放送開始のNHK連続テレビ小説「風見鶏」で注目を集め、北野異人館群を代表する存在となりました。ただし、ドラマの内容とトーマス家の歴史は全く無関係です。ドラマ放映当時、建物は神戸中華同文学校の学生寮として利用されていました。1978年、国の重要文化財に指定され、同年、神戸市が買い上げました。

展示と修復

館内には、当時の洋家具、トーマス家関連の写真、西洋アンティークの人形などが展示され、往時の様子をしのぶことができます。1995年の阪神・淡路大震災で被災しましたが、修復工事が行われ、現在も多くの観光客が訪れています。2023年10月からは、耐震改修工事のため長期休館となっています。

謎めいた屋根裏部屋

風見鶏の真下にある屋根裏部屋は、鍵付きの扉があり、二重窓になっているなど、独特の造りをしています。しかし、その用途は不明です。

風見鶏：街のシンボル

風見鶏は、避雷針としての機能に加え、宗教的な意味合いもあったと考えられています。幅90センチ、高さ80センチの鉄製で、建設当時最高水準の回転装置が用いられています。神戸の街並みを象徴する存在として、今も人々を魅了し続けています。

周辺環境

風見鶏の館周辺には、多くの異人館が立ち並び、神戸の国際的な歴史を感じさせる景観が広がっています。旧シャープ邸、イタリア館、うろこの家など、魅力的な建物が点在しており、散策するのもおすすめです。

今後の展望

耐震改修工事が完了し、再び一般公開される日が待ち望まれています。歴史と文化、そして建築美が凝縮された風見鶏の館は、これからも神戸のシンボルとして、多くの人々に感動を与え続けることでしょう。

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