神狩り

『神狩り』について

『神狩り』は、著者山田正紀による中編のSF小説です。この作品は1974年7月号の『S-Fマガジン』に一挙掲載され、作家としての山田の商業デビュー作となりました。さらに、1975年には第6回星雲賞日本短編作品部門を受賞し、デビュー作での受賞は特筆すべき業績とされています。

作品の背景

山田はその後、1975年に『弥勒戦争』、1977年に『神々の埋葬』を発表し、これら作品も『神狩り』とテーマが共通する「神シリーズ」や「神三部作」としてカテゴライズされました。また、1984年から1986年にかけて『神獣聖戦』シリーズや、1985年から1988年の『機械神ヴァイブ』シリーズなど、神に関わる題材を探求する作品を次々と発表しています。山田自身、なぜ「神」というテーマにそれほど執着しているのか、明確な理由は分からないと語っています。

2005年には本作の続編『神狩り2 リッパー』が刊行され、物語はさらに広がりを見せました。

作品のテーマとスタイル

『神狩り』には、山田が表現者としてSFを選んだ理由を示す文章が掲載されており、彼は「想像できないことを想像する」というSFの可能性について強調しています。このフレーズは、彼の作品を形容する際によく用いられ、また大森望による解説においては、ウィトゲンシュタインの著作に対するアンサーソングとしての側面が指摘されています。

本作はSFとしての要素が強い一方で、青年が見えない力と戦う青春小説としても捉えられることがあります。特に登場する「連想コンピュータ」などのSF的要素は詳細が省かれており、これが作品に古さを感じさせない理由ともなっています。山田自身は、本作がSFであるとは思っていないと発言しており、ジャンルを超えた読み方が可能な作品とも言えるでしょう。

あらすじ

プロローグ

物語はルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタインが神と対立しようとするシーンから始まります。彼は師であるバートランド・ラッセルに協力を求めますが、断られ、それでも彼は「語り得ぬこと」を語り続けます。

第1部 古代文字

主人公の島津圭助は、ミステリー作家の竹村の依頼で未発見の古代文字を調査します。しかし遺跡での事故により竹村は亡くなり、島津は不審な男を目撃します。彼はその後、古代文字の解析を進め、特異な論理構造を発見します。神に関わる出来事に巻き込まれ、島津は神と対抗する芳村の仲間に誘われます。

第2部 挑戦者たち

島津は芳村たちとともに神との戦いを挑みますが、状況は厳しく、仲間たちが次々と命を失います。島津たちは大学の学生を巻き込み、古代文字の分析を試みますが、運動は弾圧されます。

第3部 再び……

逃げる身となった島津は、脇田と出会い、NASAとの接触を経て再び神と対峙することを決心します。彼は最後の覚悟を持って、神に挑む運命に立ち向かうのです。

書誌情報

山田正紀の『神狩り』は、初版から現在まで多くの版と装丁が登場しており、著名な解説や考察が付されることも多い作品です。

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