神谷忠

神谷忠氏（1939年1月5日生）は、オートバイ分野において、技術開発、競技運営、安全啓発、さらには災害支援に至るまで、幅広い領域で多大な貢献をしてきた人物です。

本田技研工業でのキャリア
神谷氏は本田技術研究所に長年勤務し、先進的なオートバイの研究開発に従事しました。特に、高速走行時における車両の操縦安定性に関する研究は、今日の高性能バイク設計の礎となる重要な分野です。その知見は、多くのモデルに活かされています。

また、ホンダが世界最高峰のロードレースに挑むために開発した伝説的なマシン、NR500の開発プロジェクトにおいては、完成車試験研究部門のチーフとして中心的な役割を担いました。この革新的な楕円ピストンエンジンを持つマシンは、技術的な挑戦の象徴であり、その開発過程で培われた経験は、その後のホンダのレース活動や市販車開発に大きな影響を与えました。ホンダの社内組織であるブルーヘルメットにも所属し、活動していました。

モータースポーツへの貢献
ホンダの競技活動においても、その手腕を発揮しました。HRC（Honda Racing Corporation）が設立された後、モトクロスチームの初代監督に就任。ホンダのオフロードレースにおける競争力向上に貢献し、数多くの成功を支えました。

MFJでの要職
国内のモータースポーツ統括団体であるMFJ（一般財団法人 日本モーターサイクルスポーツ協会）においても、長年にわたり要職を歴任しました。ロードレース委員会の副委員長として、国内ロードレースの発展と円滑な運営に尽力したほか、安全対策委員長として、競技における安全基準の策定や向上に貢献しました。さらに、ダートトラック部会では部会長を務めるなど、多様な競技分野の振興に関わりました。

社会貢献活動
オートバイの専門家としての豊富な知識と経験は、社会貢献活動にも活かされています。特に、災害発生時の支援においては、オートバイの機動性が重要な役割を果たします。神谷氏は、災害ネットワークボランティア埼玉において、バイク災害救助隊の隊長を務め、被災地での救援活動に積極的に参加しています。

著書活動
自身の持つ技術的な知見、競技経験、そして安全に関する啓蒙活動は、複数の著書を通じて広く一般に伝えられています。

『フレディ・スペンサーのライディング解析』（三栄書房）では、当時のトップライダーの技術を深く掘り下げています。
『まんがでわかるバイクライフ』（集英社）、『まんがでわかるバイクライフⅡ 蛮ちゃんサーキットに挑戦』（集英社）は、バイクの楽しさや基本的な知識、安全な乗り方を分かりやすく解説しています。
『2輪サーキットヒーロー入門 - 峠のワインディングからサーキットへ駆け上がれ!』（講談社）は、サーキット走行へのステップアップを目指すライダーに向けた入門書です。
『神谷忠のレーシングスクールBOOK』（山海堂）では、自身の経験に基づいたレーシング技術や考え方が紹介されています。

これらの著書は、多くのバイク愛好家や、これからバイクに乗ろうとする人々にとって、貴重な情報源となっています。

神谷忠氏は、本田技研工業での先進技術開発、HRCでの競技チーム運営、MFJでの組織運営と安全対策、そして災害救援活動に至るまで、日本のオートバイが関わる様々な分野で中心的な役割を果たしてきました。その多岐にわたる貢献は、日本のオートバイ文化全体の発展に欠かせないものです。

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