神野善治

神野善治：自然、人間、そして神を繋ぐ民俗研究の第一人者

神野善治氏（1949年-）は、日本の民俗学、民具学、そして博物館学における第一人者です。武蔵野美術大学名誉教授の称号を持ち、民俗学博士の学位も取得しています。氏の研究は、人間と自然、そして神との三者関係において、人々がどのように生活を営み、世代を超えて知識や技術を伝承してきたのかを探ることに焦点を当てています。

神野氏の研究テーマの中心は「民俗」です。氏は「民俗」を、単なる習慣や風習といった狭い概念にとどまらず、より広範な視点から捉えています。具体的には、祭りや伝統的な職人技といった無形の文化遺産と、生活道具（民具）に代表される有形の文化遺産、この両方を包括的に研究対象としています。特に、民具を通して、人々の生活様式や自然環境との関わり、そして信仰との結びつきを探求する氏の研究姿勢は、民俗学研究に新たな視点を提供してきました。

氏の研究は、現代社会における「時間」の概念と民俗・民具との関わりにも及んでいます。長年に渡り、時間の流れの中で変化し、継承されてきた民俗や民具の研究を継続しており、その成果は多くの論文や著書に反映されています。

神野氏の研究活動は、学界から高い評価を受けています。代表的な受賞歴としては、

『筌漁の研究（下）─狩野川水系を中心として─』（『沼津市歴史民俗資料館紀要』6・7 1983年）で第3回日本民俗学会研究奨励賞
『人形道祖神 境界神の原像』（白水社 1996）で第37回柳田國男賞

などが挙げられます。これらの受賞は、氏の研究の質の高さと、民俗学研究への貢献の大きさを示しています。

経歴

神野氏は1949年東京都に生まれました。慶應義塾大学経済学部卒業後、沼津市歴史民俗資料館で学芸員として7年間勤務。その後、文化庁文化財調査官（民俗文化財担当）として10年間従事しました。1996年には國學院大學文学部より民俗学博士の学位を取得。1997年から武蔵野美術大学造形学部に助教授として着任し、1999年には教授に昇進しました。2019年には名誉教授となりました。

主な著書

神野氏の研究成果は、数多くの著書・論文に結実しています。主な単著には『木霊論 家・船・橋の民俗』（白水社 2000）、『人形道祖神 境界神の原像』（白水社 1996）などがあります。共編著も多く、民具に関する事典や、博物館学、生涯学習に関する著作なども手掛けています。これらの著作は、民俗学研究のみならず、博物館学や教育分野にも多大な影響を与えています。

研究の意義

神野善治氏の研究は、民俗学、民具学の分野に多大な貢献を果たしました。氏の研究は、単に過去の文化遺産を記録・保存することにとどまらず、現代社会における人間と自然、そして伝統との関係性を再考する上で重要な示唆を与えてくれます。氏の業績は、将来の世代が、豊かな文化遺産を理解し、継承していく上で、なくてはならない指針となるでしょう。

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