神長美津子

神長 美津子（かみなが みつこ、1950年 - ）は、日本の教育界において、長年にわたり幼児教育学および保育学の分野で重要な役割を果たしてきた教育者、教育学者です。

経歴

栃木県出身。教育者としての第一歩は、宇都宮大学教育学部附属幼稚園での勤務であり、ここで20年間、子どもたちと直接向き合う経験を積みました。この現場での豊富な経験が、その後の研究活動や政策提言の基盤となっています。

その後、教育行政の舞台へと移り、文部省（現在の文部科学省）において初等中等教育局幼稚園課の教科調査官を務めました。さらに、国立教育政策研究所の教育課程研究センターでは教育課程調査官として、国の教育課程に関する調査研究に深く関与しました。これらの役職を通じて、幼児教育の方向性を定める重要な役割を担いました。

大学においては、東京成徳大学子ども学部教授を経て、2013年から2021年まで國學院大學の教授を務め、後進の指導にあたりました。2021年から2024年までは大阪総合保育大学教授として教育に携わり、令和6年度からは同大学の特任教授として活動されています。また、長年の功績が認められ、國學院大學名誉教授の称号を得ています。

研究と貢献

神長教授の研究は、幼児期から小学校への移行期における子どもの発達と教育に焦点を当てた実践的なアプローチが特徴です。現場経験に根ざした視点から、保育・教育の質の向上に貢献しています。

特に重要な貢献として、平成20年度に実施された幼稚園教育要領の改訂に関与したことが挙げられます。この改訂作業においては中心的な役割を果たし、新しい教育要領の理念や内容を広く普及させるため、その解説書や実践事例集の作成にも尽力しました。これらの著作は、全国の幼稚園教諭にとって不可欠な手引きとなりました。

また、国の重要な教育政策形成にも深く関与しており、幼保連携型認定こども園の教育・保育要領改定に関する検討委員会の委員を務めました。さらに、中央教育審議会教育課程部会の幼児教育部会では主査代理として、国の幼児教育・保育のあり方について専門的な立場から提言を行い、その方向性を決定する上で大きな影響力を行使しました。

主な著作

神長美津子教授は、幼児教育・保育に関する多数の著作を世に送り出しており、その影響力は学術界だけでなく、現場の教育者にも広く及んでいます。

単著としては、『はじめよう幼稚園・保育所「小学校との連携」』、『心を育てる幼児教育』、『保育のレベルアップ講座』、『保育の基本と環境の構成』などがあり、実践的な視点から保育・教育の基本や課題について論じています。

共著や編著、監修書も非常に多く、そのテーマは多岐にわたります。『幼児教育』、『保育内容 環境』、『教育課程論』、『保育方法論』、『保育内容総論』といった保育学の基礎分野から、『園内研修に生かせる実践・記録・共有アイディア』、『気になる子」の保育と就学支援』、『子どもと楽しむ自然体験活動』、『園評価の実践ガイド』、『幼稚園幼児指導要録・保育所児童保育要録記入ハンドブック』など、現場の具体的なニーズに応えるものまで幅広く手掛けています。また、「年齢別クラス運営シリーズ」や「ごっこ遊び」に関する監修書は、日々の保育実践に直接役立つものとして高く評価されています。

これらの著作群は、幼児教育・保育の理論と実践を結びつけ、教育者の専門性向上に大きく貢献しています。

長年にわたる教育現場での経験、教育行政への貢献、そして研究活動と著作を通じて、神長美津子教授は日本の幼児教育・保育の発展に不可欠な人物であり続けています。現在も特任教授として、また名誉教授として、その豊富な知識と経験を伝えています。

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