禁断の魔術 ガリレオ8

禁断の魔術 ガリレオ8

『禁断の魔術 ガリレオ8』は、著者東野圭吾による人気ミステリー「ガリレオ」シリーズの第8作目で、2012年10月に文藝春秋から単行本が刊行されました。シリーズ内では短編集としては5作目の位置づけとなります。

この作品は全編新たに書き下ろされたもので、前作『虚像の道化師 ガリレオ7』で短編は完結したという著者の予想を裏切り、湯川と草薙のキャラクターにさらに深く迫るエピソードが添えられています。特に、シリーズの根幹である科学的推理を基にした新たな視点が加わり、読者を惹きつけています。

あらすじ概要

本書には、「透視す」「曲球る」「念波る」「猛射つ」の4つの短編が収められています。それぞれのエピソードでは、湯川が様々な謎に直面し、彼の透視や念波のような特殊な現象と科学を融合させた解決法が描かれています。

第一章・透視す

湯川は、知り合いの草薙に誘われて銀座のクラブ「ハープ」に行き、そこでホステスのアイ（相本美香）から透視の技巧を目の当たりにする。彼女は巧みに湯川の氏名を当て、さらにはプライベートな情報まで読み取ってしまう。その後、アイは殺害され、湯川は草薙と共に犯人を突き止めるために奮闘する。透視の背後にある真相と美香の過去に迫ることで、事件が明らかになっていく。

第二章・曲球る

プロ野球選手柳沢の妻が謎の殺害を遂げる事件が発生。柳沢自身も事情を抱えており、湯川が事件を科学的に分析することで、妻の行動の背景が徐々に明らかになっていく。凶器や遺留品、さらには殺害に至った理由を探るべく湯川が先細りする柳沢と共に再捜査を行う。

第三章・念波る

都内での事件で生存者が姉からのテレパシーによって情報を伝え、湯川がその能力に挑む形で進行する。この章では、科学と霊的な現象が交錯し、湯川の知的探求がさらに深まります。

第四章・猛射つ

古芝家の青年が湯川の教え子であり、彼の姉もまた不幸な事故に巻き込まれる。彼の行動が殺人に向かう過程が描かれ、どのように湯川が事件の真相に迫るのかが見どころとなっています。特に、彼が学んだ技術がどのように犯罪行為に利用されるかの展開が緊迫感を演出します。

作品の魅力

本作は、東野圭吾が持つ独自の視点と深い人間描写が融合した作品です。それぞれの短編を通じて、キャラクターの成長や葛藤が丁寧に描かれ、読者は科学と推理の醍醐味を楽しむことができます。また、創作における魔術の象徴的な要素が、物語のなかで巧みに取り入れられている点も魅力の一つです。特に「猛射つ」では、湯川が自身の教え子を通じて教訓を受ける姿が印象的です。

『禁断の魔術 ガリレオ8』は、科学がもたらす驚異と人間ドラマが絡み合う、読みごたえのある一冊です。

もう一度検索