福井駅前短編映画祭

映画祭の概要

福井駅前短編映画祭（ふくいえきまえたんぺんえいがさい）は、福井県福井市を舞台に開催されるユニークな映画の祭典です。この映画祭は、戦後未曽有の災害から力強く復興を遂げた福井市の歴史的背景を踏まえ、最高賞であるグランプリに「フェニックス大賞」という名を冠しています。短編映画という形式を通じて、国内外の多様な映像表現を紹介し、新たな才能の発掘と育成を目指しています。

歴史と成り立ち

この映画祭の源流は、福井市出身の俳優、津田寛治氏が監督した映画「カタラズのまちで」の制作に関わったスタッフたちが始めた活動に遡ります。彼らは月に一度、短編映画の上映会を企画しており、その名称も現在の映画祭と同じく「福井駅前短編映画祭」でした。当初、この活動は福井工業大学デザイン学科の教員と学生たちが中心となり、福井駅周辺に点在する空き店舗などを活用して行われていました。地域に根ざした手作りの上映会として、地元の映画ファンや学生の間で徐々に認知度を高めていきました。

転機が訪れたのは、活動の中心メンバーであった福井工業大学の木川剛志氏が和歌山大学へ転勤したことです。この異動を契機に、それまで月例で行われていた上映会は、より体制を整えた年一度の大規模な映画祭へと発展する道を歩み始めました。この映画祭化にあたり、設立に関わりの深い津田寛治氏が審査委員長として就任し、映画祭の方向性や評価の基準を定める上で重要な役割を担うことになりました。地域に根ざした自主的な活動が、本格的な映画祭へと成長を遂げたのです。

会場

映画祭のメイン会場として利用されているのは、福井市の中心部にあるテアトルサンクスクリーン5です。この映画館には、福井市の歴史と深く関わる背景があります。テアトルサンクの前身の一つである福井松竹座は、1945年の福井空襲によって壊滅的な被害を受けましたが、戦後の復興期において、市内でも最も早く営業を再開した映画館の一つでした。このような歴史を持つ場所をメイン会場とすることは、戦後復興の街で開催される映画祭のコンセプト「フェニックス」とも象徴的に呼応していると言えるでしょう。

主な企画

福井駅前短編映画祭は、コンペティション部門の上映だけでなく、独自の企画も展開しています。特筆すべきは、2016年の第2回から開始された「ムービーハッカソン」です。この企画は、単に映画を鑑賞するだけでなく、市民が主体的に映画制作に関わる機会を提供することを目的としています。参加者は数日間の期間内にチームを組み、脚本作りから撮影、編集までを一気に行い、短編映画を完成させます。第1回フェニックス大賞受賞者である神谷竜仁氏をはじめ、プロの映画人が講師やアドバイザーとして参加者をサポートし、質の高い作品作りを支援しています。完成した作品は映画祭期間中に上映され、市民の創造性や地域の魅力を映し出した力作が多く生まれています。このムービーハッカソンは、市民と映画人、そして地域を結びつける貴重な場となっています。

開催実績など

福井駅前短編映画祭は、2015年に第1回が開催されて以来、継続して実施されています。当初はアートイベント「フクイ夢アート」のスピンオフ企画（2015年第1回、2016年第2回）として位置づけられていましたが、「フクイ夢アート」の休止に伴い、2017年の第3回からは単独の映画祭として開催されています。これまでに複数の開催回を重ねており、公式サイトなどでは各回の開催履歴や、栄えあるフェニックス大賞をはじめとする受賞作品の情報などが公開されています。地域に根ざした映画文化の振興と、新しい才能の発掘に貢献する映画祭として、福井駅前エリアの活性化にも寄与しています。

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