福島ケルン

福島ケルンについて

福島ケルンは南極大陸の昭和基地近く、南緯69度、東経39度35分に位置するケアンであり、福島紳の追悼を目的に造られました。福島は理化学研究所に所属していた地球物理の専門家であり、第4次南極地域観測隊の越冬隊員として活動していました。彼が消息を絶ったのは1960年のことで、南極の厳しい環境下での出来事でした。

福島紳の遭難

福島は第4次越冬隊の一員として、宇宙線やオーロラの観測に従事していました。福島が越冬中だった1960年10月は、昭和基地周辺でA級ブリザードが発生し、外界との連絡が非常に困難になりました。特に、その期間にはベルギー南極観測隊の隊員が行方不明になる事態が発生し、捜索活動が行われました。

1960年10月7日から11日までの期間、福島は犬への給餌とカブース（ソリ付きの小屋）の点検のために外出しましたが、100メートルほど進んだところで同行者と離ればなれになりました。10日の午後、最悪のコンディションが続き、最大風速32.5メートル、瞬間風速は40メートルに達し、視界は1メートル以下という極限の中での捜索が行われました。しかし、福島は見つからず、最終的に8日後の17日に彼の死亡が確認されました。当時、南極観測隊においてこのような人命の損失は大きな衝撃を与えました。

福島ケルンの設立

福島の遭難を受け、彼を偲ぶケルンが昭和基地近くに建設されました。ケルンは、福島が失踪した場所から約100メートルの距離にあり、彼の記憶を留めるための重要な文化財として位置づけられています。高さは2.5メートルで、外側には福島の先輩研究者たちによる追悼の銘板が二枚取り付けられています。一枚には茅誠司による「福島紳君この地に逝く」というメッセージが刻まれ、もう一枚には立見辰雄の弔文が長谷川万吉によって書かれています。さらに、ケルンの内部には福島が生前に愛用していたパイプと彼の遺骨が安置されています。

慰霊祭と日本の南極観測隊

福島ケルンでは、毎年、越冬隊が夏隊を見送った後に「越冬成立式」が行われ、その後に福島ケルン慰霊祭も開催されます。この式典では、福島の冥福を祈るとともに、今後の安全を心から願う重要な時間が持たれています。福島の事故以降、日本の南極観測隊は2021年までに新たな死者を出していないため、彼の出来事は観測隊にとっての重要な教訓として受け継がれています。このように福島ケルンは、南極における研究の厳しさと、その中で生きた人々の思いを象徴する存在となっています。

参考文献

• - 嶋田庸嗣「氷雪に散った若き研究者 南極での宇宙線観測と福島紳」『理研ニュース』第241号、理化学研究所、2001年7月
• - 神沼克伊『白い大陸への挑戦 日本南極観測隊の60年』現代書館、2015年

また、福島ケルンの近くには福島岳があり、そちらも彼の存在を感じることができる場所です。

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