福島海上保安部

福島海上保安部（ふくしまかいじょうほあんぶ、英語表記: Fukushima Coast Guard Office）は、日本の海の安全を守る海上保安庁の地方機関の一つです。福島県の太平洋沿岸部を管轄水域とし、船舶の航行安全確保、海難救助、海上における法令違反の取締まり、海洋環境の保全など、多様な海上保安業務を担っています。庁舎は福島県いわき市小名浜に位置しています。

沿革

福島海上保安部の歴史は、戦後間もない1948年（昭和23年）5月1日に、現在の前身となる小名浜海上保安署として産声を上げました。その後、組織の拡充を経て、1950年（昭和25年）6月1日には小名浜海上保安部へと昇格します。庁舎は、1971年（昭和46年）3月26日に港湾合同庁舎へ移転。海上保安業務の効率化・強化のため、2003年（平成15年）4月1日には福島航路標識事務所を統合し、航路標識に関する業務も一体的に担うこととなりました。組織名称は、2004年（平成16年）4月1日をもって現在の福島海上保安部に変更されています。

巡視船艇の配備も進められ、2010年（平成22年）3月8日には、旧「あぶくま」に代わる高速高機能タイプのPM型巡視船「あぶくま」が配備されました。

そして、2011年（平成23年）3月11日、東日本大震災が発生。これにより、当時の港湾合同庁舎1階部分が水没する甚大な被害を受けました。しかし、海上保安業務を滞らせるわけにはいかず、迅速な復旧作業が進められ、2012年（平成24年）7月8日には庁舎の1階部分などの復旧が完了しました。震災からの復興が進む中、2013年（平成25年）6月27日には、旧「なつい」の後継として、こちらも高速高機能タイプのPM型巡視船「なつい」が新たに配備されました。組織機能の向上と業務遂行能力の強化を図るため、2015年（平成27年）1月20日には、より強固で機能的な新港湾合同庁舎へと移転し、現在に至ります。

組織体制

福島海上保安部は、いわき市小名浜辰巳町11番地の小名浜港湾合同庁舎内に設置されています。組織は、責任者である部長の下に次長が置かれ、以下の各課がそれぞれの専門分野を担当しています。

管理課: 組織運営の根幹を担い、地域防災対策官を中心に、総務や渉外に関する業務を行います。
警備救難課: 海上における犯罪の取締りや海難救助の最前線を担います。専門官、鑑識官、国際取締官などが配置され、警備係、救難係、外国人漁業対策係といった専門チームが活動しています。
交通課: 船舶交通の安全確保を担当します。専門官が指揮を執り、航行安全係や安全対策係が、航路標識の管理や海上交通ルールの周知徹底などを行います。

福島海上保安部の管轄海域で活動する主な船舶としては、巡視船「あぶくま」と巡視船「なつい」のほか、俊敏性に優れた巡視艇「てるかぜ」が配備されており、これらの船艇が日々の海上保安業務に従事しています。

管轄内の主な航路標識（灯台）

福島海上保安部は、船舶が安全に航行するための重要な目印となる灯台の維持管理も行っています。管轄区域には、歴史的な背景を持つ灯台が点在しており、それぞれが激動の時代を乗り越えてきました。

塩屋埼灯台（しおやさき）: いわき市に立つ、福島県を代表する灯台の一つです。1899年（明治32年）12月15日に初めて光を灯しました。しかし、この灯台は度重なる災害に遭っています。1938年（昭和13年）11月5日の地震ではレンズが大きく損壊し、灯塔にも亀裂が入ったため、安全確保のため取り壊されました。その後、1940年（昭和15年）3月30日には鉄筋コンクリート造りの2代目灯台が完成しましたが、太平洋戦争中の1945年（昭和20年）には、機銃掃射や艦載機による攻撃を受け、再び大きな被害を受け、21歳の灯台職員1名が殉職するという悲劇も経験しました。戦後、1947年（昭和22年）5月5日にようやく完全復旧を果たしましたが、2011年（平成23年）3月11日の東日本大震災で再び甚大な被害を受け、灯ろう部分や回転機構などが損傷しました。懸命な復旧作業により、2011年（平成23年）11月30日に応急復旧、2014年（平成26年）2月にはほぼ復旧工事が完了し、同年2月22日に復旧完成記念式典が行われ、翌2月23日から一般参観も再開されています。

鵜ノ尾埼灯台（うのおさき）: 1958年（昭和28年）2月10日に初点灯した灯台です。かつては灯台職員が常駐しており、1962年（昭和37年）まで職員が居住していました。東日本大震災では、電力線路が被災した影響で消灯しましたが、復旧作業を経て、2012年（平成24年）10月25日に再び光を灯しました。

小良ケ浜灯台（おらがはま）: 1955年（昭和30年）3月28日に運用を開始した灯台です。東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故の影響で、長期間にわたり送電が停止し、消灯を余儀なくされました。しかし、避難指示区域の見直しなどにより電力インフラの復旧が進み、2013年（平成25年）3月には送電が再開。同年4月16日に無事復旧し、再び沿岸を照らし始めました。

* 番所灯台（ばんどころ）: 1928年（昭和3年）5月15日、「綱取埼灯竿」として福島県内で2番目に点灯した航路標識です。1955年（昭和30年）8月10日に現在の名称である「番所灯台」に改称されました。東日本大震災では灯塔に亀裂が入る被害を受けましたが、2013年（平成25年）9月には周辺景観との調和に配慮したデザインにリニューアルされています。

福島海上保安部は、これらの灯台を含む航路標識の適切な管理を通じて、福島の海の安全確保に貢献しています。激しい歴史を乗り越えてきたこれらの灯台は、沿岸地域を見守る象徴として、今日も沖合を航行する船舶に安全な航路を示し続けています。

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