福島繁太郎

福島繁太郎：近代美術を繋いだ画商と評論家

福島繁太郎（1895年-1960年）は、日本の美術史において重要な役割を果たした画商にして美術評論家です。その生涯は、激動の時代を背景に、国際的な視野と深い美術への造詣を合わせ持つ人物像を浮かび上がらせます。

東京に生まれ、株式仲買人であった父・福島浪蔵の財力もあり、恵まれた環境で育ちました。東京帝国大学法学部政治学科卒業後、イギリスへの留学を経て、1923年にはフランスへ渡ります。このパリでの滞在が、彼の生涯における転機となりました。

パリでは、数多くの画家たちと交流を深め、特にジョルジュ・ルオーとは親交を結びました。同時代の芸術家との交流を通じて、福島は近代美術への理解を深めるとともに、積極的に作品収集を行いました。こうして形成された「福島コレクション」は、ルオーをはじめ、マチス、ドラン、ピカソなど、錚々たる巨匠たちの作品を擁する、質の高いコレクションとして知られています。

パリ滞在中に、ジョルジュ・ワルドマーらと美術評論誌『フォルム (Formes)』を創刊するなど、美術界における活動も積極的に行いました。1933年末に帰国した福島は、コレクションの展覧会を企画する傍ら、美術評論家として活躍を始めます。銀座に「フォルム画廊」を開設し、日本の美術界に近代美術を紹介する役割も担いました。

評論家としての福島は、数々の著書を世に送り出しました。『印象派時代』や『エコール・ド・パリ』といった著作は、近代美術への理解を深める上で重要な役割を果たし、現在でも高く評価されています。これらの著作を通じて、彼は当時の美術動向を的確に捉え、分かりやすく解説することで、日本における近代美術の普及に貢献しました。

1966年にはブリヂストン美術館で「旧福島コレクション展」が開催され、ルオー、マチス、ドラン、ピカソなど49点の作品が一堂に展示されました。この展覧会は、福島コレクションの重要性と、福島繁太郎が日本の美術界に残した足跡の大きさを改めて示すものとなりました。

彼の妻、福島慶子もまた随筆家、評論家として知られており、夫婦で日本の美術文化の発展に貢献したと言えるでしょう。福島繁太郎の生涯と業績は、単なる画商や評論家という枠を超え、近代日本の美術史における重要な一頁を飾るものです。彼の活動は、国際的な視点と深い美術への理解、そして日本の美術界への貢献という、三つの側面から評価されるべきでしょう。彼の情熱と貢献は、後世の美術愛好家や研究者にとって、常に学ぶべき対象であり続けるでしょう。

主な著書

印象派時代 (石原求竜堂、1943年)
印象派時代 (文藝春秋社、1946年)
エコール・ド・パリ 第1 (東京出版、1948年)
フランス画家の印象 (毎日新聞社、1950年)
ピカソ (新潮社、1951年)
エコール・ド・パリ 2 (新潮社、1951年)
* 近代絵画：印象派から現代まで (岩波書店、1952年)

もう一度検索