福永耕二

福永耕二（ふくなが こうじ）は、1938年1月4日にこの世に生を受け、1980年12月4日に惜しまれつつも42年の生涯を閉じた日本の俳人です。その故郷は、南国の豊かな自然に恵まれた鹿児島県、川辺町（現在の南九州市）でした。

俳句への道を歩み始めたのは、私立ラ・サール高等学校在学中に遡ります。この頃から、権威ある俳誌「馬酔木」へ俳句を投稿するようになりました。1956年に鹿児島大学へ入学すると、地元の俳誌「ざぼん」の活動に加わり、その編集にも携わりました。大学では文理学部の国文科で学び、1960年に卒業後、純心女子高等学校で教壇に立ち、国語教師としての道を歩み始めます。

転機が訪れたのは1965年、俳人・能村登四郎の推薦を得て上京を決意します。千葉県へと移り、登四郎が教鞭をとっていた私立市川高等学校に勤務することになりました。この上京は、福永耕二の俳句活動をさらに飛躍させる契機となります。1969年には、長年投句を続けてきた「馬酔木」の同人となり、その中心的な存在へと成長します。さらに、1970年には能村登四郎が新たに創刊した俳誌「沖」の立ち上げにも参加するなど、師との深い関わりの中で活動の幅を広げました。同年には、「馬酔木」の編集長という重責も担っています。

作家としての評価は着実に高まり、1972年には「馬酔木賞」と「沖賞」を相次いで受賞しました。彼の俳句は、青春期特有の瑞々しい感性や、情感豊かな叙情性を特徴としており、多くの読者や評論家から支持されました。代表的な句としては、「新宿ははるかなる墓碑鳥渡る」などが挙げられます。この句は、都会の風景の中に、若さゆえの孤独や憧憬、そして季節の移ろいを重ね合わせた、彼らしい抒情を湛えた作品と言えるでしょう。

句集としては、1972年に第一句集『鳥語』、1980年に『踏歌』を刊行しています。そして、没後の1982年には『散木』が出版されました。特に『踏歌』は高い評価を受け、1980年には第4回俳人協会新人賞に輝きました。これは、若手俳人としての彼の才能が広く認められた証であり、今後の活躍が期待されていました。

しかし、その輝かしい前途は無念にも絶たれてしまいます。受賞の年にあたる1980年12月、敗血症に心内膜炎を併発するという病により、僅か42歳という若さで急逝しました。俳壇に確かな足跡を残し、これからさらなる円熟が期待された矢先の早すぎる死は、多くの人々に衝撃を与えました。福永耕二の俳句は、短い生涯の中で生み出されたにも関わらず、その青春性や叙情性によって、今なお多くの俳句愛好家に読み継がれています。

もう一度検索