私の身に起きたこと

『私の身に起きたこと』

概要

清水ともみの著書『私の身に起きたこと』は、2020年に季節社から発表され、特に中国のウイグル人に対する人権問題をテーマにしています。この作品は、漫画を通じて彼らの苦境を訴えることを目的としており、初めての発表はTwitterで行われました。漫画は瞬く間に広まり、香港の反政府デモでも取り上げられ、多くの人々に注目されました。こうした反響を受け、この作品は書籍として出版される運びとなったのです。

背景

著者がウイグル問題に関心を持つようになったのは、2017年頃のテレビ番組がきっかけでした。その番組では、中華人民共和国の新疆ウイグル自治区で進行している深刻な人権弾圧に関するリポートが放送されており、その中にはウイグル人が臓器を摘出されるという衝撃的な疑惑も含まれていました。また、特定の空港には臓器輸送用の専用通路が存在すると報じられており、この報道を受けて著者は衝撃を受けました。この問題を広く知らしめる必要があると、強い思いが芽生えたのです。

2018年にはこの問題が再放送されたことが大きな転機となり、著者はこのテーマを扱うことを決意しました。漫画を描き始めたのは、2019年4月で、内容は中華人民共和国による監視状態に置かれたウイグル人の生活を描写しています。著者は、政治に無関心な人々に対してもウイグル問題を伝える手段として漫画が有効だと考えたのです。

作品の展開

この作品は、15か国語に翻訳され、ワシントン・ポストなどのメディアでも紹介されました。その中で、中国政府によるウイグル族への弾圧がいかに深刻であるかが描かれています。また、具体的なエピソードとして、エジプトで三つ子を出産した後に中国に帰国した女性の物語があります。彼女は、2013年から2015年にかけて三度も拘束され、劣悪な環境での電気ショックを受けるなど、悲惨な経験を強いられました。その結果、引き離された三つ子のうちの一人が病気で命を落とすという痛ましい展開も描かれています。

書籍化の過程

この漫画が書籍として出版されるにあたっては、装丁について疑問の声も寄せられています。なぜ児童書ではないのに、絵本のような形をとっているのでしょうか。これについては、出版社の決定ではなく、著者の意向が反映されています。著者は、絵本という形にすることで、より多くの人に感情的に訴えかけやすくなると考えた結果、このスタイルを選んだそうです。

著者は、「絵本という形であれば、身近に置かれた際に、多くの人に手に取ってもらえるのでは」と期待を寄せています。通常の書籍であれば重厚感があり、難解な内容を詰め込むことが多いですが、絵本の形式では情報を詰め込みすぎず、感情へのアプローチが可能だと考えています。

まとめ

清水ともみの『私の身に起きたこと』は、ウイグル人に対する人権侵害の実態を漫画という形で伝えることで、多くの人々に問題意識を促す作品です。その継続的な呼びかけが、今後の社会にどのような影響を与えるのか、非常に注目されます。

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