私を抱いてそしてキスして

『私を抱いてそしてキスして』

概要

『私を抱いてそしてキスして』は、1992年に公開された日本の映画で、先進的なテーマを持った作品として知られています。主演の南野陽子が演じる合田圭子を中心に、HIVに感染し悩む女性の姿を描いています。この作品は日本映画で初めてエイズに関する問題を直接的に取り上げただけでなく、厚生省からの推薦を受けた初の作品でもあります。監督は佐藤純彌が務め、彼の手腕によって感動的かつ深いメッセージを持つ映画が完成しました。

あらすじ

物語は、旅行代理店で働くOLの合田圭子が昔の恋人からHIV検査で陽性だったという衝撃的な知らせを受け取るところから始まります。恐怖と不安でいっぱいになった彼女は、自身もHIVに感染していることを確認し、心に大きな傷を負います。しかし、同時に出会った高野晶という男性との関係は、圭子が自身の病気を隠したまま進展してしまいます。やがて、圭子が感染者であることが明らかになり、晶は離れてしまいます。

その後、圭子のもとにはジャーナリストの津島美幸が訪れます。美幸はエイズに対する偏見や差別について取材をしており、圭子にその思いを伝えます。最初は彼女を拒む圭子ですが、美幸の真剣な姿勢に徐々に心を開いていきます。彼女たちの交流は、エイズという病に対する社会の無理解を浮き彫りにし、視聴者にさまざまな疑問を投げかけます。

物語はさらなる波乱を迎え、圭子は妊娠していることに気づきます。彼女は自分の子供もHIVに感染しているのではないかと不安を抱える中、高野晶が戻ってくることになります。過去の過ちを乗り越え、2人は共に新たな家族を築こうと誓います。最終的に出産を迎えた圭子の子供は幸運にも感染していなかったものの、物語は圭子の余命が尽きてしまうという悲劇的な結末を迎えます。

スタッフとキャスト

この映画の監督を務めるのは佐藤純彌であり、彼は本作を通じて深い社会問題を掘り下げています。企画においては大手映画会社である東映が強く関与しており、企画は南野陽子が乗り出したことがきっかけです。また、脚本には田部俊行、麻生かさね、高橋洋が関わり、家田荘子のノンフィクションが原作となっています。キャストには南野陽子や赤井英和、南果歩といった有名芸能人が名を連ねています。

映画の評価

『私を抱いてそしてキスして』は、公開当初から賛否を呼びました。エイズをテーマにしたことで、作品が冗漫な通俗ドラマとして受け取られる懸念もありましたが、批評家たちはその真面目な取り組みを称賛しています。特に、社会に対する障壁を崩す作品として、評価されています。エイズという疾患を通じて人間の葛藤や感情を描いた本作は、今でも多くの人々に考えさせる重要な映画です。

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