秋水式火薬ロケット

秋水式火薬ロケット

秋水式火薬ロケットは、大日本帝国海軍によって開発が進められた無線誘導式の地対空兵器です。この兵器は、特に当時の空襲に対抗する目的で設計されたため、ただのミサイルとは異なる特徴を持っています。

開発の背景

1945年、第二次世界大戦の最中、日本本土はB-29爆撃機による攻撃を受けていました。この状況を受けて、海軍は航空局に対して特殊局地戦闘機の開発を直ちに命じました。航空局は無線操縦を利用する対空誘導弾の開発に着手し、村上勇次郎技師がこのプロジェクトの主導を担いました。

この開発プロセスにおいて、様々な安定性の計算や実験用小型模型を用いた試験が行われ、最終的な設計案がまとまりました。最初は川崎航空機工業によって実機の製作が進められる予定でしたが、制作図面を作成している最中に戦争が終結し、計画は中止となってしまいました。

特徴と設計

秋水式火薬ロケットは通常のミサイルと異なり、炸薬を搭載することなく、機体前部の衝角を用いて敵機に体当たりすることで撃墜を狙います。この設計は、ロケット局地戦闘機である秋水（J8M）のプロジェクトから派生したもので、その外観は木金混合構造による後退翼を持つ無尾翼機となっています。

胴体は砲弾型で、衝角として機能するために先端部と主翼前縁は強度と鋭さを兼ね備えた構造が採用されています。推進パワーには固体燃料ロケットが利用され、先述の通りレール式の発射台から発射されます。

運用方法

発射後、ロケットが点火され無線誘導を受けながら上昇し、約100秒で高度9,000メートルに到達します。その後、敵機に向けて体当たり攻撃を仕掛け、攻撃後は無線誘導により滑空して着陸する設計でした。帰還後はロケット部分を交換し、再利用する計画も立てられていました。

興味深い点として、本機は無人航空機として設計されていましたが、有人型と思われるラフスケッチも見つかっており、当時の技術者たちの想像力の豊かさを伺わせます。

諸元

この兵器の計画値は以下の通りです。

• - 全長： 2.80 m
• - 全幅： 4.00 m
• - 翼面積： 5.0 m²
• - 自重： 200 kg
• - 最大重量： 800 kg
• - エンジン： 固体燃料ロケット（推力120 kg）×4
• - 戦闘高度： 9,000 m
• - 武装： 衝角 × 1

参考文献

• - 石黒竜介、タデウシュ・ヤヌシェヴスキ『日本陸海軍の特殊攻撃機と飛行爆弾』大日本絵画、2011年
• - 粟野誠一ほか編『日本航空学術史（1910－1945）』日本航空学術史編集委員会、1990年

秋水式火薬ロケットは、独特な設計で時代の最前線を行く技術を駆使した兵器であると言えます。

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