秋田典子

秋田典子氏は、日本の学術分野において、ランドスケープ学および都市計画学を中心に活動する研究者です。現在は千葉大学大学院園芸学研究院の教授を務め、さらに同大学の災害治療学研究所の教授も兼担しています。その専門分野は、都市計画の理論と応用、ランドスケープの設計と評価、そして近年その重要性が増している都市農地や緑地の計画論に及びます。

大阪府出身の秋田氏は、高度な研究を志し、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻に進学しました。2004年に博士課程を修了し、博士（工学）の学位を取得しています。博士論文のテーマは「田園地域におけるまちづくり条例の実効性に関する研究」であり、都市近郊や農村部の特性を踏まえた地域づくりの方策や、住民の参加が計画の実現に与える影響について深く掘り下げた研究は、その後の学術活動の確固たる基盤となりました。

博士号取得後、秋田氏は東京大学国際都市再生研究センターにて研究員としてのキャリアを開始しました。ここでは、都市の活性化や再生に関する国際的な視点からの研究に携わりました。翌2005年には、同大学の大学院新領域創成科学研究科に活躍の場を移し、学際的な環境の中で自身の研究領域をさらに広げました。

2008年、秋田氏は千葉大学大学院園芸学研究科に准教授として着任しました。千葉大学園芸学研究科は、伝統的にランドスケープ分野の研究教育が盛んな機関であり、秋田氏の専門分野と親和性の高い環境で、長年にわたり教育者として後進の指導にあたるとともに、精力的に研究活動を展開しました。その教育・研究における貢献が認められ、2021年には教授へと昇進しました。

千葉大学における秋田氏の研究は、都市空間における緑地や農地の多様な機能に着目しています。急速な都市化の中で失われつつある自然環境の価値を再認識し、都市における緑の持つ生態学的、社会的、文化的な重要性を明らかにし、それらを計画的に都市空間に統合することで、持続可能で質の高い都市環境を創出することを目指しています。研究成果は多くの学術論文として発表されています。

秋田氏は国内だけでなく、国際的な研究交流も積極的に行っています。特筆すべきは、2022年から2023年にかけての約1年間、フランスのパリベルビル建築学校にCNRS（フランス国立科学研究センター）の研究員として招聘されたことです。この海外での経験は、ヨーロッパにおける最新の都市計画やランドスケープ研究動向に触れる機会となり、自身の研究視野を大きく広げました。

さらに、2023年には、千葉大学が世界レベルの研究推進を目指して設立した国際高等研究基幹（IIRS）のPrincipal Investigator (PI)に任命されました。これは、秋田氏の研究が国際的にも高く評価されており、大学全体の研究力向上において中心的な役割を担うことを期待されていることの証と言えるでしょう。

これまでの秋田氏の活動は、学術界のみならず、広く社会においても認められています。特に、2021年には令和3年度日本造園学会賞（事業・マネジメント部門）を受賞しました。これは、造園やランドスケープ分野における優れた事業やそのマネジメントに対して贈られる栄誉ある賞であり、秋田氏の研究が学術的な成果に加えて、実践的な社会貢献にも繋がっていることを示しています。

研究活動と並行して、秋田氏は専門書の執筆にも積極的に携わっています。共著として、日本の都市計画を学ぶ上で重要な文献である『都市計画の理論』（学芸出版社、2006年）、『住民主体の都市計画』（学芸出版社、2009年）、『都市計画・まちづくり紛争事例集』（ぎょうせい、2010年）などを出版しています。また、国際的な研究成果として、生態系サービスとグリーンインフラに関する英文の共著書『Urban services to ecosystems : green infrastructure benefits from the landscape to the urban scale』（Springer、2021年）も発表しており、その研究活動の幅広さを示しています。

秋田典子氏は、都市計画とランドスケープ学という二つの領域を横断する視点から、都市が抱える環境問題や社会課題の解決を目指し、教育、研究、国際交流、社会貢献と多岐にわたる分野で精力的に活動を続けています。その活動は、今後の都市と環境のあり方を考える上で、重要な示唆を与え続けています。

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